公開期間:8月27日〜29日。習作。
三人称小説、原稿用紙20枚、執筆1日。
三人称形式で主人公が複数おり、それぞれの視点から語ることでミステリテイストを出せないか――なんてことを考えました。簡単なプロットを用意してみます。
1:ある学校に転校してきた男子中学生が主人公。転校初日にある女子に一目惚れし、仲良くなろうとする。
2:ヤクザを父に持つ少女が主人公。最近、階段から突き落とされたり、植木鉢が落ちてきたり、命の危険を感じている。
3:催眠術師が主人公。ある少年を操って、敵対組織のボスの娘を殺そうとする。
第1章と第2章では、見えない敵と戦う少年と少女のちょっとサスペンスを前面に押し出し。第3章では、伏線を回収し真相を明かしつつ、少年の苦悩を押し潰す催眠術師をホラーっぽく描いてみたり。……ここまで書いてから気付いたが、奈須きのこ著『空の境界』を被ってることに気付く。ま、これは例え話だからいいか。
さて。
この三人称形式・複数主人公を実際に使ってみて、自分でその出来を確認しようと思い書いたのが『凶ツ器』だ。既に公開終了済みなので、梗概を簡単に説明する。
1:寿命を減らすことで輝く煙草と、煙草を吸うことで寿命を減らしている自分とを対比するトゥイードゥルダム。心の奥底に眠る破壊衝動、妹への愛、自ら寿命を削らなくてはならない理由。
2:喫煙する兄に手を挙げてしまった自分を嘆いているトゥイードゥルディ。そんな彼女に、兄妹の主人ジーニアスクレイジィは動物の除去を頼み、彼女はそれを快諾する。作中で明かされることはないが、ここでの動物は人間の浮浪者。
3:トゥイードゥルダムとトゥイードゥルディの兄妹が、人間ではなく凶ツ器であると明かす。自傷し、破壊衝動を解き放ち、自爆することでジーニアスクレイジィを殺すトゥイードゥルダム。煙草の最後の輝きのように、妹を解放するため。
4:燃え尽きたトゥイードゥルダム。妹に別れを告げ、死ぬ。
改めて梗概だけを読めば、そう悪い小説でもない。
けれど実際は、執筆に時間を掛けなかったので設定を活かしきれていないし、構成的にも不備があり、全体的に稚拙。特に凶ツ器(=サイボーグ・人造人間)という存在は、SF・ファンタジィ的であるから、世界観に通常より多くの時間と文字を割くべきであった。兄妹が主人の元で働くようになった経緯、どうして兄は妹を助けようと思ったのか、凶ツ器とはどういったものでどうして必要とされるのか。そういった要素をプラスして、原稿用紙70枚前後でまとめれば美しくなったと思う。
反省点は山のようにあるが、分かったことも幾つかある。
それは、三人称形式・複数主人公で、最後に事件の真相を明かそうとするならば、終盤ギリギリまで、作者はミスディレクションに徹しなければならないということ。その上、再読したときも楽しめるように構成と伏線にも、こだわらなくてはならない。
理想としては佐藤友哉の『フリッカー式』『エナメルを塗った魂の比重』と『水没ピアノ』の中間。一旦、読む手を休め、冷静に考えれば予想できないこともない結末でありながら、それをさせないように誘導させるような筆致。
現時点における自分の力なら出来ないことはないだろうと思うが、実践してかつ完成させるには、結構な時間が掛かるだろうと思われる。だから、これはいずれ取り掛かる課題にしておこうと思う。そのときまで、おやすみ。