雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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大塚英志『物語の体操』カード方式

 2個目。

『エピタフが贈る言葉』秋山真琴
 主人公の名は、カイ。第八堕天狼と呼ばれた大罪人の父親を幼い頃に無くし孤児院で育つ。父が父であったため友人は得られず、シスターからも嫌われた(逆信頼)。痛みを知る人は、優しくなれる。一人きりで遊ぶ彼は、自然や動物の声が聞こえるようになった(慈愛)。やがて彼の元に、彼女を無条件に愛してくれる母親が現れる(善良)。しかし彼女は同時に、父が残したもう一人の息子も愛していた。カイの弟は母親の愛情を受けていたが、他人からは嫌われていたので母親だけに依存し、カイには懐かなかった(逆意志)。愛することしか知らない母親と、奪うことしか知らない弟の存在に、カイは戸惑った。悩んだ末彼が選んだ道は、母親に愛情を向け愛されることの喜びを教え、弟からは母親を奪い痛みを教えることだった(結合)。雁字搦めに戒められ崩れるに壊れてゆくカイ、母親と弟は彼の影響を受け、日増しに人間味を増してゆくが、彼は疲弊してゆく一方であった。ある日、彼は父親の墓参りをする。第八堕天狼の墓には、北斗七星の八つ目が描かれ、その下には遺言「笑って死ねる俺が一番幸せだ」と彫ってある。はは、とカイは嗤う(逆治療)。

 難しい。
 七つ目のカード“逆治療”なんてまとまっているのかいないのか全然だ。文字通り、“嗤ってごまかした”って感じだし。……ってか、この七枚というのがまたクセモノなんだよなあ、起承転結で話を終わらせないといけないのが、返って難しい。個人的にはもう一転二転欲しいところだ。起承転結転結、という風に。
 後、逆位置も難しいので、次回からとりあえず逆は無しってことで。


 3個目。

『若き世界樹』秋山真琴
 世界樹はその根の先から、幹、枝葉の全てに至るまでが世界そのものとリンクしている。すなわち、根幹は事象や運命そのものを、枝なら組織や家族、葉の一枚なら一人の人生を。あるとき、数千万年に一度なるという種子が世界樹からできた。世界樹は種子に言う、「お前は外の世界を見ておいで」と(解放)。親元を離れ、世界へ向かった種子は、ちょうどいい感じな森が見つかったので、そこに腰を据える(生命)。芽が生えて、双葉が見えたところで森の支配格にある大木が因縁をつけてくる「おいこら、人の森で手前勝手な真似して許されると思っているのか」云々(節度)。怯える世界樹の種子に、森の若手が彼を弁護する「彼という新しい可能性を迎え入れることは、堪え忍ぶべき苦痛だ。我々はあそこに生えたかもしれない身内よりも、彼のような外から来たものを大事にするべきだ」とかなんとか(勇気)。弁護され調子づいた種子は、どんどん大きくなり、やがて支配格にあった大木よりも大きくなり、元の世界樹ほどの大きさになった(創造)。その頃には彼がその森を支配するようになっていた。彼は彼がまだ幼かった頃、彼を弁護してくれた若手(今はもう老木になっている)に敬意を示し、外来者を暖かく迎える誠意ある統治を行うと決める(至誠)。

 キーワードが簡単だと、前後が繋がりやすく、指向性のハッキリとした小説が書けるが、これはこれで面白くないな。まず、世界樹の種子……なんて、生まれる前から勝ち組みたいな設定が気に食わない。失敗や絶望したことのない奴が、誠意ある統治なんてできるわけないだろうと小一時間……。書いたの自分だけどね。


 4〜6個目。

『因果の歯車 上』秋山真琴
 厳然たる計算式の上に、精子卵子を組み合わせ、究極とも言える知性と勇気を兼ね備えた天才の遺伝子を持つ赤ん坊が生まれた(公式)。生まれた瞬間に七歩歩き天上天下唯我独尊、これは本物だと周囲からの期待も高まる(信頼)。この世紀の大実験を嗅ぎつけたマスコミは彼を金のなる木にしようと、世間に引っ張り出そうとする(解放)。しかしそうはさせまいと科学者たちは守りに入る(庇護)。しかし彼は「環境が作った天才は環境に左右されるが、科学が作った天才は環境に左右されない」と宣言し、世間の前に出て、双方の利益となろうとする(善良)。その後彼は研究結果を世界のために役立てたりもしたが、それらはすべて最初から決めていたある計画を遂行するための布石にすぎなかった!(秩序)

『因果の歯車 中』秋山真琴
 善意と誠意に溢れる彼の活動により、世界はすっかり彼という天才を信用し、彼の中の天才性を信頼した(至誠)。しかし彼の中の天才性は、実は眠りから覚めてすらいなかったのだ。真の天才になるため、彼は現存する環境が作った天才とコンタクトを取り、彼らと共同プログラムなどを組み、その能力の吸収に計る(誓約)。地球上に存在するすべての知識を得た彼は、いよいよ自らの天才性を目覚めさせようとする(生命)。しかし、それは自らの中に新たな人格を生み出すことであり、既に何十人も人格を所有していた彼の人格の一人はこれを危険と判断し、幾つかの人格を統合する必要があると言った(結合)。だがメインの人格は、これから起きてくる天才性のためにわざわざ容量を確保する必要はないと言う、「気合で乗り越えろ」(意志)。そんな無茶な! とも思ったが、とうとう計画は実行されてしまい、天才は真の天才となった。この日、世界に因果律が降臨した(公式)。

『因果の歯車 下』秋山真琴
「吾輩はアカシックレコードである、名前は要らない」因果律を知る真の天才は、既存のすべての人格を食い尽くすことで眠りから目覚めた(変化)。運命の行く末を知る彼は、世界の醜さを嘲笑い、来たるべくすべての運命を許容する(寛容)。そんな彼の内側に眠る因果律を、解放しようとかつての彼の知人や、彼を育てた科学者たちが迫る(解放)。一方、因果律を容認し受け入れることができるのは宗教のみと、宗教家たちが彼を取り込もうとする(結合)。しかし、アカシックレコードそのものである天才は、それを書き換えることも可能であり、文字通り無敵の存在であった。そして同時に、その力を使うことが、酷く空虚なことでもあると悟っていた。「私は降臨すべき存在ではないのだ、眠りから醒ませてはいけなかったのだ」彼はひとりの女を娶り、子を孕ませる(生命)。「天才の遺伝子など存在しない、あらゆる天才は環境によって作られる。吾が妻よ、もしそなたに充分な勇気があれば、吾らの子は因果を背負わずにすむだろう」そう言い残して、天才は火の酒を満たした杯を傾け、入水自殺した(勇気)。

 おー、面白いじゃん? やっぱりこれぐらいの長さがないとな、うん。小説にすれば軽く200枚は行けるし。
 一応、説明しておくと、カードを3回引いて、系21枚のカードを使って物語を作ってみた。生命・結合・解放なんかが被ったが、まあ、ある程度被らない方が確率的におかしいだろう。
 基本的に物語はカードを引いてから考えているので、中以降の展開を上の時点では考えてないし、下の展開を中以前では考えていない。しかしそれが返って、功を奏したと言うか、意図せず、上手い“引き”が作れたかもしれない。ちなみにタイトルを考えたのは、これに限らずいずれも最後まで作ってからです。


 カードを何度か引きなおして、続き物にするというのは「物語の体操」として、非常に有効的に思う。次回からは、続き物でと言うことで。