
- 作者: 鯨統一郎
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1998/05/01
- メディア: 文庫
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「悟りを開いたのはいつですか?」実は仏陀は悟りを開いていないのではないかという仮説。初っ端からぶっ飛んでいる、仏教を根底から引っくり返すような発言ではないだろうか。
「邪馬台国はどこですか?」標題作にもなっている作品で、邪馬台国が実は東北にあるのではないかという仮説。
「聖徳太子はだれですか?」推古天皇と聖徳太子と蘇我馬子の三人が、実は同一人物であるという空前絶後の仮説。この短編集の中で、一番、面白く読めたのがこの作品。到底ありえない結論で幕が落ちるのだが、収録されている作品群の中では、知っている名前も多く親近感が沸いたというのもあるが、三人が同一人物である証拠――あるいは三人を同一人物にしなくてはならなかった動機が“歴史を闇に埋もれさすため”という部分に魅力を感じた。どうにも黒歴史と言うのは、好奇心を抱かされます。
「謀反の動機はなんですか?」織田信長が自殺をするために、明智光秀に謀反を起こさせたという仮説。これは、ここに提示されている情報が確かならば、あるいは真実に手を届かせているのかもしれないと思わせてくれた。他の作品は基本的に、もっともらしいものではあるもの「いや、よく出来た冗談だな」という部類なのだが、これだけはあるいは真実かもしれないな、と。
「維新が起きたのはなぜですか?」坂本竜馬を殺した暗殺者の正体を暴くのかと思いきや、明治維新の黒幕は誰かという趣旨。ミステリではありふれた手法を使っており、今ひとつといった感じ。
「奇跡はどのようになされたのですか?」キリストとユダが実は同一人物なのだという仮説。これも今ひとつ。
本編を読んでいる間はどうにもうさんくさい空気が漂い、薄っぺらい登場人物と合わさって味気ない感じがしないでもないのだが、解説を読むと途端に本書が面白いもののように感じられるのだから不思議だ。