雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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スカイワード

スカイワード (電撃文庫)

スカイワード (電撃文庫)

 端的に言って、期待しすぎた。電撃文庫からの新人で、面白いと評判だったので手にとってみた次第だが、まるで駄目。力量があまりに足りていない。最下層の貧民街に住む男性でも女性でもない中性体の主人公と、空に一番近い首府城で八女神から託宣を受け取るために踊る舞巫女姫が出会い、何日か共に生活をし惹かれあいでも離れ、再び出会うという話だがあまりに王道。主人公以下、大半の登場人物が皆に虐げられている設定を持っていて、虐げられているもの同士が仲良くなりようやく救われるというのも安易だし、全体的にご都合主義な展開も気に入らなかった。
 それでも目を見張る部分はあり、ひとつは果てしない空への憧憬。タイトルになっているスカイワードとは、主人公が持っているリュージュ(まあ、飛行機のようなもの)の名前で、意味は「空へ向かう」……だったかな。実際、物語は舞巫女姫が待っている空に向かうように進行し、地下街での生活の中にも度々、絶妙なタイミングで空の描写が紛れ込み、空がどうしようもなく美しいものだと思い込んでしまわせる力を持っている。もうひとつは八女神の存在。ストーリィの中盤でヒロインが八女神という、この物語世界にて信奉されている神を否定する場面があるのだが、それに対する主人公の反論が真に迫っている。これは素晴らしい。仮に「神は死んだ」と言った人間に真っ向からこの理論をぶつければ、並大抵の人であれば思わず前言を撤回してしまいたくなるぐらいに論理的で説得力がある。