- 作者: 谷川流,いとうのいぢ
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2004/07/01
- メディア: ペーパーバック
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ハルヒシリーズと学校シリーズとでは、ずっと学校シリーズの方を気に入っていたけれど、今はハルヒの方こそ素晴らしいと思っている。と言うより、今までの三冊、憂鬱・溜息・退屈はこの消失を書くために用意された大きな伏線なのではないだろうかとさえ思っている。これは――とにかく、素晴らしい。
心底、感じたのはあらすじで損をしているということ。冲方丁の『カオスレギオン』や森博嗣の『四季』を読んだときも感じたが、あらすじを用意せず、ぶっつけで本編を読んだ方が絶対にいい。しかし表紙では得をしている。この表紙は見事なまでのミスリード。ページ207で明かされたその名前に自分は完全に驚かされた。
先に紹介した二作もそうなのだが、何が損をしているかというと「主人公が今、どのような状況に置かれているか」それを気付くまでの経過が抜群に優れているのだ。これからこのシリーズを読み始めようと思っている人のために、あらすじは絶対に読むなよと忠告したい。現状把握という主人公と読者が完全にシンクロするその重要な経過は、あらすじを読んでいたら絶対に為されない。そこには現状が一言で説明され、読者が主人公に先んじて現状を知ってしまうことができるのだから。ああ、もったいない。
それにしても、それにしても、ああ素晴らしい。きっと谷川流こそ、自分が求めていた作家なのではないだろうかとさえ思えてきた。もう谷川流がいれば、自分は不要だな、というぐらい。まだ残っている著作が三作もあると思うと、これからが楽しみで仕方がない。