雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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しずるさんと底無し密室たち

 シリーズ二作目、前巻を読んだときは前期『ブギーポップ』に見られる上遠野節は少ないし、ライトノベルとしてもミステリとしても今ひとつだなと感じたけれど、二巻となる本書は比較的、楽しく読めた。
 読んで感じたのは、上遠野浩平、いい意味で力を抜いて本書に当たっているなと。彼が得意とする作風や台詞回しを敢えて抑えることで、ある種の押し付けがましさ――これが多いと面白いと同時に、読者を疲弊させる――が減っていて、本書はとても読みやすい。事件ひとつひとつも奇怪な怪奇事件でありつつも、幻想味を保っているのが優れていると思った。以下、雑感。
「しずるさんと吸血植物」死体を囲むように花が咲いているというのは、幻想を感じさせる。事件そのものも陳腐ながら、順当に解決されているし、良い。
「しずるさんと七倍の呪い」個人的には一番、好きかもしれない。作中に出てくるカードゲームが面白そうだというのもあるが、既に終わってしまっている事件というのが好きだ。
「しずるさんと影法師」前二作が幻想的であったりスプラッタであるとするならば、これは都市伝説的と喩えるべきだろうか。ブギーポップ然り、上遠野浩平は、こういうのを書かせると途端に上手くなると思う。
「しずるさんと凍結鳥人」モチーフその物はとても好き。狭い空を滑空する凍てついた死体。よーちゃんが(どうでもいいが、しずるさんがよーちゃんと口にする度に瑶ちゃんと呼ばれているような気がしないでもない)東京の空は狭いことに気づいた瞬間、何故かとても物悲しかった。
 ふと気付いたが、『GOTH』のライトノベル版が『しずるさん』なのかもしれない。いや、『GOTH』もライトノベルだけれど。