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1034『サマー/タイム/トラベラー 2』

サマー/タイム/トラベラー (2) (ハヤカワ文庫JA)

サマー/タイム/トラベラー (2) (ハヤカワ文庫JA)

 本書の主題は、いわゆる思春期に見る将来の不安および大人になりたくないという恐怖だろうか。一巻から繰り返し繰り返し、未来は存在しないというフレーズが繰り返され、しかしヒロインは文字通り時を駆けることで、未来をどこまでも進むことができる。そして彼女の仲間は、未来へ行こうとする彼女に対し、置いていかれるという感情を抱く。それは自分たちが絶対に辿りつけない高度に発達した科学が魔法のようになっている遠未来に辿りつくことのできる彼女に対する羨望であり、仮に辿りつけたとして、そのとき自分たちは大人になってしまっている……という諦観ではないだろうか。その何とも表現できない、けれど思春期と高校生というフレーズで容易に言いえてしまえる、灰色の、ある種の後悔にも似た感情が全編を覆い尽くしているように思えた。そう考えると、ラストの余韻も悪くない。浪人生向けの作品ではないだろうか。
 好ましかったのは、登場人物がブギーポップや死線の蒼のように強すぎないことだ。宇宙戦争銀河帝国も、世界の敵も人類最強も、青春小説には不要である。