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著作権保護期間の延長

 hasetyuさんのところで、著作権保護期間が現状の五十年から七十年に延長される可能性があることを知りました(id:hasetyu:20060929:1159537773)。
 興味を持ったので、調べてみたところ青空文庫ブログで問題の経緯が詳しく述べられていました。また、wikipediaにも多少の説明がありました、著作権の保護期間著作権延長法
 小説の著作権を考えるのであれば、社会における小説の立場というものを明確に意識する必要があるように思います。何故なら、小説と言うのは、作者がひとりで書いて本にして読者の手に届けているわけではなく、作者の書いた小説を本にする編集者や出版社がいて、それを全国の読者に届ける流通や書店があり、そして実際に小説を読む読者がいるからです。
 松本零士の発言が問題を的確に表現しているように思います。引用します。

「著作者が生涯をかけて作ったものの権利が、50年で打ち切られるのは耐え難い」
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0609/22/news086.html

 確かに著者の努力を考慮するのであれば、可能な限り長期間、著作を著作権で保護した方がいいでしょう。しかし、保護期間を延ばしてしまうと、全集を作るのは格段に難しくなり、復刊も進まず、読者は緩やかに減衰するように思います。そうなれば作者が作品に込めているであろう「読者に宛てて送ったメッセージ」はより届きづらくなってしまいます。とは言え、作家によっては「読者に宛てて送ったメッセージ」より「自分の子や孫の利益」を重視するかもしれません。著作権保護期間が五十年から七十年に増えれば、その二十年の間に発生した利益は、その作家の子孫に与えられるわけですからね。
 したがって、著作権保護期間を延長することによって生じるメリットは、著作権を有している側、つまり作者にしかないでしょう。読者にとっては、うーん、デメリットでしかないのではないでしょうか。小説は既に社会という構造の中に組み込まれてしまっているわけで、著作権保護期間を延長することはそのバランスを崩すことを意味し、様々な変革を求めている出版業界を考えるなら、むしろ著作権保護期間を縮めた方がいいのではとさえ思ってしまいます。