雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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1143『太陽の塔』

太陽の塔 (新潮文庫)

太陽の塔 (新潮文庫)

 第15回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。目下、休学中の五回生という大学生の中でも最もたちの悪い主人公は、クリスマスを目前に恋人の水尾さんに振られたばかりだ。寒風、吹きすさぶ中、愛用の自転車「まなみ号」で近くの書店に向かう。彼の手にはA4版の紙をセロハンテープで繋げて屏風のようにした紙片があり、それには水尾さんの平均的な一日の行動が曜日別に記録されているのである。
 痛々しさよりも、痛快さの方がより表現されているように思った。先に『四畳半神話大系』を読んだのだが、こちらの方がレトリックが弱い分、よりストレートに著者の声が出ていたように思う。それは、自分が弱虫で、虎の威を被った狐であることを知っているが故に、冬眠中の熊を襲い、しかし返り討ちにあったから百円ショップで買ってきた豹柄の布を自身に巻きつけて鼓舞し、なんとか搾り出したような唸りのような呻きのような声だ。高校生や大学生に是非とも勧めたい。