1142『俺に撃たせろ！』

俺に撃たせろ! (徳間デュアル文庫)

　1990年から92年にかけてSFアドベンチャーに連載された「アルツ・ハマーへ伝言」を『俺に撃たせろ！』と改題し、さらに書き下ろしの『番外篇』が収録されている。主人公はかつて名探偵と呼ばれていたらしいアルツ・ハマーという男。即座にアルツハイマーを連想させる名前の主人公が活躍するアクションで、著者が火浦功となれば、もう中身の九割は予想がつくというものである。したがって、ここでは内容を紹介するなんていう無粋な真似はしない。
　いやあ、それにしても笑った。あるいは不覚にもと言うべきか、笑ってしまった。最初はそのあまりのくだらなさに読み飛ばしていこうと心に決めたのだが、火浦功はなんだかんだ言って「読ませる」文章を書く作家だ。ぐいぐい、引きずられるようにして最後まで読んでしまった。特に最後の一ページは、思わず「タイトルの『俺に撃たせろ！』と言うのは『（最後の一撃を）俺に撃たせろ！』ということだったのか！！」と叫ばせるほど軽妙なる斬れ味を持っていた。こういうのがあるから、火浦巧はたまに読みたくなる。