雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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1151『空港にて』

空港にて (文春文庫)

空港にて (文春文庫)

 中村一義の『金字塔』に収録されている「どこにいる」を、そのまま小説にしたような作品であった(褒め言葉)。
 本書はコンビニ、居酒屋、公園、カラオケボックス、披露宴会場、クリスマスに賑わう街中、駅前、そして空港を舞台にした刹那的な掌編小説である。それぞれの舞台となる空間に主人公が入った瞬間から物語が始動し、少ないページ数の中、舞台となっている空間の成分が凝縮され詰みこまれている。言ってみれば、村上龍の文章を媒介に、小説に書かれている空間が、読者の頭の中に再構築される感じを楽しむ小説なのだ。斬新な読書体験をした。四百円と安価なので、是非この不思議な雰囲気を味わってもらいたいと思う。