雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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1153『メルキオールの惨劇』

メルキオールの惨劇 (ハルキ・ホラー文庫)

メルキオールの惨劇 (ハルキ・ホラー文庫)

 人の不幸をコレクションする男の依頼を受けた「俺」こと12は、かつて子供の首を切り下ろした女を調査する……。
 原石のような小説であると感じた。平山夢明の煌めく才能が、随所随所で顔を覗かせているのだが、残念かなそれらは有機的に連結しておらず、ときには互いに互いを殺しあってしまっているのだ。特に引かれたのは、鬼交の血統に時おり現れる天才という存在。メルキオール……バルタザール……カスパール……彼らはある一時において、天才と称されるに相応しい異能を手に入れるが、その代償にやがて白痴になるという運命を負うことになるのだ。この希望と絶望、光と闇、そしてそれら全体を内包する名状しがたきもの。そういったもので本書は構成されている。もし、これを書いた当時の著者が、今ぐらい洗練されていたら、本書は途轍もない傑作になっていたかもしれない。