端的に言って『刀語』は小説というかたちをした週刊少年ジャンプ的な連載漫画だったのではないか、と。
西尾維新の来歴と毎月刊行という形態
そもそもにして西尾維新という作家は、漫画の影響を強く受けている作家です。その代表作『戯言』シリーズでは、しばしば『ジョジョの奇妙な冒険』や『幽☆遊☆白書』からの引用が見られましたし、他にも哀川潤や零崎双識といった漫画好きを自称し、漫画ネタを口にするキャラクタも多いです。
一方、毎月刊行に関してですが、刊行ペースの早いことで知られるライトノベルは、漫画の単行本と同じ感覚で購入されているのではないかといった分析がされることが多いです*1。『刀語』がライトノベルであるかどうかはさておき、12ヶ月連続刊行というのは、間違いなく早い刊行ペースであり、追っていた読者にとっては漫画を追うのに近い気持ちだったことは想像に難くないでしょう。
そして、この早い刊行ペースを逆手に取って、西尾維新が兼ねてからやりたかった小説というかたちで連載漫画を書くという計画が実行させた……という可能性もけして小さくはないように思います。
『幽遊白書』と『封神演義』との類似点
以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。
この3作ってどうも似ているような気がするのですよね。
類似点 | 刀語 | 幽遊白書 | 封神演義 |
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蒐集 | 完成形変体刀十二本 | 霊界探偵としての仕事 | 封神計画 |
敵群 | 真庭忍軍 | 暗黒武術会の各チーム | 十天君 |
父親 | 鑢六枝&飛弾鷹比等 | 雷禅 | |
歴史 | 四季崎記紀による歴史 | 歴史の道標による歴史 |
このような類似点から、どうも『刀語』は『幽遊白書』や『封神演義』に似ているような気がするのですよね。や、このふたつに似ていると言うより……もう少し踏み込んで言えば『刀語』は週刊少年ジャンプ的要素を揃えているように思うのです。
また、極めて個人的なことを言わせていただければ月に一度、必ず続きが読むことが出来たという状況が終わってしまうことも、週に一度であったり月に一度であったり必ず出る漫画に似ているように思いました。
結論
刊行ペースが月一と、従来の連載小説では考えられないぐらい早いこと。そして内容に週刊少年ジャンプ的要素が見られること。
以上から『刀語』は小説というより漫画だったんじゃないかな。と言いますか、漫画を小説でやってみたのではないかな、と思いました。
おまけ
書影 | 題名&刀の所有者&噛ませ犬 | 書影 | 題名&刀の所有者&噛ませ犬 |
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第一話 絶刀・鉋 刀の所有者:真庭蝙蝠 感想はこちら |
第二話 斬刀・鈍 刀の所有者:宇練銀閣 噛ませ犬:真庭白鷺 感想はこちら |
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第三話 千刀・ツルギ 刀の所有者:敦賀迷彩 噛ませ犬:真庭喰鮫 感想はこちら |
第四話 薄刀・針 刀の所有者:錆白兵 噛ませ犬:真庭蟷螂&蝶々&蜜蜂 感想はこちら |
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第五話 賊刀・鎧 刀の所有者:校倉必 感想はこちら |
第六話 双刀・鎚 刀の所有者:凍空こなゆき 噛ませ犬:真庭狂犬&川獺 感想はこちら |
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第七話 悪刀・鐚 刀の所有者:鑢七実 感想はこちら |
第八話 微刀・釵 刀の所有者:日和号 噛ませ犬:真庭海亀 感想はこちら |
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第九話 王刀・鋸 刀の所有者:汽口慚愧 噛ませ犬:真庭鴛鴦 感想はこちら |
第十話 誠刀・銓 刀の所有者:彼我木輪廻 感想はこちら |
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第十一話 毒刀・鍍 刀の所有者:真庭鳳凰 噛ませ犬:真庭人鳥 感想はこちら |
第十二話 炎刀・銃 刀の所有者:否定姫 感想はこちら |