1995年にスーファミで発売された『タクティクスオウガ』は、当時から評判は聞いていたけれど、中古のゲームショップでもプレミア価格がついていて敬遠してしまっていました。その後、サターン版とプレステ版が相次いで発売されましたが、なんだか機会を逃してしまい昨年末にリメイクのPSP版を購入して、ようやくプレイの機会を得られました。
アルティメット ヒッツ タクティクスオウガ 運命の輪 - PSP
- 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス
- 発売日: 2011/12/22
- メディア: Video Game
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アルティメットヒッツ ファイナルファンタジータクティクス 獅子戦争 - PSP
- 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス
- 発売日: 2009/07/30
- メディア: Video Game
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- 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス
- 発売日: 2006/07/20
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松野泰己のゲームの作り方は、一風変わっていて、その特徴が端的に表現されている文章がWikipediaにあったので引用させて貰いますが、
世界観の構築を非常に重要視したゲーム作りを行う事で有名であり、シナリオ制作にあたってはまず歴史や神話、文化や政治体制など世界の根幹となる部分を細密に設定し、それらを土台とする広大な空想世界を創造(『オウガバトルサーガ』や『イヴァリース』)、その中の出来事として物語を作るというスタンスを取る。製作するストーリーラインの多くは西洋ファンタジー調を基とし、国家、宗教、人種間の紛争に及んだ複雑なものである。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%BE%E9%87%8E%E6%B3%B0%E5%B7%B1
こんな風に、物語や登場人物を見せるために世界観を作るのではなく、まず、世界観から作っていくのが面白いところです。
特に素晴らしさを感じるのは、引用文の末尾にある「国家、宗教、人種間の紛争」を、じっくりと取り上げているところですね。
最近、永野護『ファイブスター物語』を読んでいるのですが、著者解説で「アメリカ旅行の経験が作品に活かされている」という一節がありました。日本に住んでいると、周りは日本人ばかりで、たまに外国人を見かけても、ほとんど違いが分かりませんが、たとえばロサンゼルスやサンフランシスコに行くと、驚くほど多くの人種が街中を歩いています。
混血だったり、ルーツが多岐に渡っていたり、両親が日本人であってもアメリカで生まれ育ち、日本語は喋れないしお箸を使えないひともいます。さらに、街を歩く人々の大半が、何らかの宗教を信じ、何らかの党に属しています。そこにあるのは、縦のラインと横のラインなんていう平面的な要素ではなく、もっと複雑で、もっと有機的なものです。
この複雑怪奇なる現実感が松野泰己の作品には、息づいているような気がするのですよね。
ちなみに、松野泰己が当初、シナリオを描いた『ファイナルファンタジーXII』には、とうとう人間以外の種族まで登場するらしいですね。据え置きゲームは、最近、とみに取っつきにくさを覚えているので、未プレイですが、いずれ必ず触れてみたいなとは思っています。
アルティメットヒッツ ファイナルファンタジーXII インターナショナル ゾディアックジョブシステム
- 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス
- 発売日: 2009/07/30
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このエントリのタイトルにしました名台詞「僕にその手を汚せというのか」は、さすがに耳にしていましたが、どんな場面で放たれるものかまでは知らなかったので、いざ、そのシーンに辿り着いたときには愕然としました。
このゲームには、他にも魅力的な科白や、印象に残るシーンが非常に多いです。
理想を追い求めたり、現実に屈したり、裏切ったり、裏切られたり、富と名声の誘惑に負けたり、親友が死んだり、親族が寝返ったり、英雄に仕立て上げられたり、逆賊として追われたり……こうして、曖昧な言葉でゲーム中の各シーンを思い返してみましたが、実にドラマチックですね。まあ、ゲームなのだから、ドラマチックで然るべきわけですが……。
まあ、でも、ファンが多いのが、やはり劇的に過ぎるからでしょう。
戦争を描いているため、多くの人が死にます。味方が殺され、敵が殺され、何の罪もない市民が虐殺されていきます。分かりやすい勧善懲悪に浸かってきたひとには、さぞ衝撃的で、それこそが、このゲームが長い時間にさらされても、なお人気を博している証左でしょう。
同様の作品では『幻想水滸伝 II』が思い浮かびますね*1。複数の正義が交錯させつつ、戦争を描いてゆく手法には『タクティクスオウガ』の影響が見えます。また、作られた英雄をテーマとする『ワイルドアームズ セカンドイグニッション』にも、近いものを感じますね。
- 出版社/メーカー: コナミデジタルエンタテインメント
- 発売日: 2010/07/15
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ワイルドアームズ 2ndイグニッション PS one Books
- 出版社/メーカー: ソニー・コンピュータエンタテインメント
- 発売日: 2001/12/06
- メディア: Video Game
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カオスルートのカチュア生存エンドを、ひとつ見ただけです。うっかりアゼルスタンの加入条件を満たしそびれていたので、W.O.R.L.D.を使って仲間にしてから、ロウルートで、ヴァイスとオズマを仲間にして、せっかくだからカチュア死亡エンドを見て、それから死者の宮殿に挑み、ニバスを打ち破ったり、ウォーレンを仲間にしたり、ランスロットを仲間にしたり、ランスロットを倒したりしたいですが、多分、ロウルートの途中で再び飽きて放り出してしまいそうな気もします。
このゲーム、ストーリー自体は楽しくて最高なのですが、いかんせん戦闘が長いのが難ですよね。ある程度、レベルを上げてあげれば、さくさく進めるので、レベルを上げればいいのですが、レベル上げって苦手なんですよね……。
タクティクスオウガ 運命の輪 公式コンプリートガイド (SE-MOOK)
- 作者: スクウェア・エニックス
- 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス
- 発売日: 2010/12/02
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ついでに『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』のネタバレも、さっくりしてしまうので、気をつけるべきひとは気をつけてください。はじまりはじまり〜
いきなり出てきた『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』というのは、菅野ひろゆきがシナリオを書いているループ物のエロゲーです。選択肢によって物語が分岐し、A.D.M.Sと呼ばれる分岐マップを使って、前の分岐点に戻ったり、主人公が異なる選択をした世界線にジャンプ出来たりできます。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%93%E3%81%AE%E4%B8%96%E3%81%AE%E6%9E%9C%E3%81%A6%E3%81%A7%E6%81%8B%E3%82%92%E5%94%84%E3%81%86%E5%B0%91%E5%A5%B3YU-NO
YU-NOが一般的なAVGと一線を画すのは、A.D.M.S(アダムス)と呼ばれるシステムを採用しているためである。これは「Auto Diverge Mapping System」の略であり、「オート分岐マッピング・システム」と訳される。
実際に画を見て頂けると、一目瞭然ですが、A.D.M.Sの見た目ってW.O.R.L.D.に似てますでしょう?
まあ『かまいたちの夜』を引用するまでもなく、この手のデザインが似通ってしまうのは必然だと思いますが、敢えて『YU-NO』を引っ張りだしてきたのは、このゲームの最も印象的かつ感動的な場面は、A.D.M.S入手直前のラストシーンだと信じているからです。
ネタバレを辞さない未プレイの方に、ざっくり説明をしますと『YU-NO』のプレイヤ=主人公は、A.D.M.Sを駆使することで、すべてのヒロインを救済すべく試行錯誤が可能です。しかし、ただ一人、この世の果てで恋を唄う少女だけは、存在している時間軸が、A.D.M.S入手の直前であるが故に、彼女だけはA.D.M.Sでは救えないのです。つまり『YU-NO』というゲームは、彼女を救済するために、僅かばかりの時間をさかのぼるために、大冒険をする……みたいなもんです(上記に引用している画像で説明するなら、左端の、青い線の始まる、さらに左側が、すべてのはじまりにしておわりなのです)。
- 出版社/メーカー: エルフ(ELF)
- 発売日: 1997/12/04
- メディア: Video Game
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なんだかなあ……と思いながら、それでも、まあまあ面白かったのでニコニコ動画でメドレー動画でも探して、せめてBGMを楽しむかと思っていたら、ダウンロードコンテンツのプレイ動画を見つけてしまったのです。
死者の宮殿を潜るのには時間が掛かるし、どうせ、途中で飽きて放り出してしまいそうだからと気軽な気持ちで動画を開きましたが、数分後には興奮で手が震えてしまいました。
「第1弾 ウォーレンを捜せ!」は想定通りの内容でした。死者の宮殿を潜ったら、ウォーレンと再会できた。良かった良かった。
問題はその後です。
「第2弾 真の騎士」において、主人公デニムたちは、文字通り時間の壁を越えて、暗黒騎士のコマンドたちと死闘を繰り広げる聖騎士ランスロットを救いに行くのです。これは時間物を愛してやまない秋山にとって歓喜の展開です。本来はW.O.R.L.D.を、いくら駆使しても、デニムたちが、あの日あの場所、旧市街トラ・コリア通りにいることはないのです。歴史が、その道を歩むことはないのです。しかし! それを可能にしてしまう!!
これこそ、おまけ要素の真髄でしょう。1995年にランスロットを喪ったプレイヤが、15年の時を超えて、彼を救済する権利を得られるなんて、もう、なんか、そういうのを想像するだけで泣けてきます。
が!
ランスロットの救済など、序の口でした……。
世界の礎となり、歴史の裏側へと消えていったひとりの人物……デニムを救済するシナリオがあったのです!
それが「第3弾 十二人の勇者」です!
このシナリオでは、なんと主人公たち12人は、ゲーム開始以前の時間軸にまでさかのぼり、港町ゴリアテに夜襲を掛けようとしている、ロスローリアンのコマンド全員と戦うのです! 戦闘の盛り上がりもさることながら、終了後、父親と抱きあうデニムを見たら、目頭に涙が……なんてものではなく、号泣ですよ、もう。
と、言うわけで、ダウンロードコンテンツまで含めると大傑作の『タクティクスオウガ』についてでした。
宮部みゆきほどに、やりこめる自信はないですが、もう少し深く理解するために、今しばらくは遊んであげたいなと思います。
*1:『幻想水滸伝』って1と2が抱き合わせでPSP版が出てるのですね、初めて知った。買ってもいいかも。