ざっと、こんな感じです。
株式会社フェイス・ワンダワークスがiGameBookというシリーズ名で、ゲームブックをiOSアプリ化していたので、片っ端から遊んでみました。元は、創土社やグループSNE、FT書房が本として出していたもので、だいたい書籍と比較して半額で遊べるよう価格を調整している様子です。
いくつかのアプリは0円と表示されていて、いかにも無料のように見えますが、ほぼすべての作品において、プレイの最中に「無料版はここまで、先が読みたいなら完全版を買ってね」と出てきます。ご注意あれ。
せっかくなので、遊んだゲームブックの感想を、それぞれ少しずつ。
展覧会の絵
これは傑作でした。
十枚の絵の中の世界という、箱庭世界を次から次へと旅していくという物語構造に加え、失われた記憶を回収するという物語が、とても好みです。600円と高めですが、指セーブに相当する「戻る」機能がついているのでプレイアビリティは高めです。下手に安いゲームブックアプリを購入されて「こんなもんか」と落胆されるより、ちょっと高めかもしれませんが、これを買って遊んでもらいたいですね。
【ワンポイント攻略】和解の旋律がオススメです。
魔人竜生誕
個人的には、かなりヒットです。
いきなり怪人に襲われて死んだかと思いきや、主神によって霊神将にされ、聖魔甲を身にまとって邪魔神との対決を強いられるという、いわゆる変身ヒーロー物です。何故か、敵が一週間に一度しか現れなかったり、闇堕ちしたライバルとの対決があったり、途中の選択肢によって主神と結ばれたりするマルチエンディングだったり、全体的に、かなり完成度が高いです。こちらも600円と高めですが、オススメです。
【ワンポイント攻略】攻撃力と持久力に極振り推奨。テュルフングドライバーは敵を弱らせてから。
迷宮キングダム タダ乗り師ホーボーの攻防
『迷宮キングダム』の世界観だそうですが、知らなくても問題ないでしょう、実際、秋山も知りません。
この作品は、やや短いのですが、そこそこ面白くて、しかも、このエントリで紹介するゲームブックの中では、唯一、完全に無料という観点から「秋山がはまってるゲームブック、やってみたいけれど有料なのはなあ」と二の足を踏んでいる方にオススメです。
【ワンポイント攻略】数字はメモると吉。竜落子を仲間にするのを後回しに。
魔女館からの脱出/スペイン屋敷の恐怖
新紀元社からゲームノベルとして刊行された、文庫本2冊をアプリにしたもの。
『魔女館からの脱出』は『キャット&チョコレート』を題材に秋口ぎぐるが書いたもので、『スペイン屋敷の恐怖』は『ゴーストハンター13』を題材に安田均が書いたもので、どちらもクォリティはバッチリ。ボードゲーム勢もしくはライトノベル勢で、ゲームブックに触れてみたいという方は、こちらの方がオススメかも。どちらも400円です。
【ワンポイント攻略】困ったらイージーモードで総当り。
送り雛は瑠璃色の/顔のない村 ver.死の14
東雅夫の言うところのホラージャパネスクな、古き良きジュヴナイル。作品で言うと『久遠の絆』や『東京魔人學園』に近しいかな。
初版は1990年なので、さすがに文体は古くさくて、今の感性だと「え?」みたいなところがありますが、そういう古いのも含めて好きなひとは好きになれると思います。価格は500円です。
前日譚の『顔のない村 ver.死の14』は、無料でも遊べますが、一度に14パラグラフしか読めなくて、それ以上を読もうとすると課金するか、何時間か待つように指示されるので、とてもストレスフル。物語的にも、そんなに強固に繋がっているわけではないので、無理しなくても良いと思います。
【ワンポイント攻略】大町小学校の花壇は分かりにくい探索ポイントだと思います。
断頭台の迷宮/見捨てられた財宝/釘せめの迷宮
FT書房さんの100パラシリーズをアプリ化したもの。
いわゆる即死系で、ひとつ選択肢を間違えるとあっさりと死にます。特に『釘せめの迷宮』はしんどくて、せっかく終盤まで来たのに、初見殺しにやられて、オープニングに戻ると、あまりの徒労感に投げ出したくなります*1。『展覧会の絵』や『送り雛は瑠璃色の』にあった戻る機能があれば、ぜんぜん違った印象になっただろうに、残念です。アイテム判定を行わないイージーモードより、戻る機能の方が欲しかったですね……。
価格は『断頭台の迷宮』だけ200円と安く、『見捨てられた財宝』『釘せめの迷宮』は300円です*2。
【ワンポイント攻略】『断頭台の迷宮』は運に極振り推奨、『見捨てられた財宝』は赤と緑、両方を同時に。『釘せめの迷宮』は……。
待祭の旅/笹の葉さらさら/昔々……/ベンジャミンおじさんの家
いずれも『展覧会の絵』の作者である森山安雄による短めの作品、価格はすべて200円です。
この中なら『昔々……』が好きかな。子どもを助けるために、妖怪が住む山に挑むという、ほんわか童話テイストが素敵です。彦星と織姫の七夕伝説をSFチックに仕上げた『笹の葉さらさら』も、なかなか面白いですが。
どれも30分くらいあれば終わるので、短いものを求めているひとにはオススメかもです。
魔女探偵のあ〜メイドと名画盗難事件i〜
藤浪智之が同人で発表した作品を、アプリにしたもの……かな。
『魔女館』や『スペイン屋敷』同様にライトノベルの文脈にあるようなテイストで、200円という低価格と相まって、勧めやすい作品ではあります。かなり短くて、謎も小粒なのですが、気楽に遊べるという意味では、非常に優れています。
FastSeries1、2、3、5
フーゴ・ハルによる30分くらいで遊べるゲームブックの詰め合わせです。第1弾が『急げ!ガッコウ/開かずの扉の怪』、第2弾が『ソラミミ迷宮紀行/チャレンジ!遠泳の夏』、第3弾が『オバケにドッキンコ/カキ氷のすべる話』、第4弾が何故かなくて、第5弾が『Xマス煙突宅急便/すり寄れ!お年玉』です。
いずれも200円……と言うか、100円のゲームブックが2冊入っている、と捉えた方が正しいかもしれません。
出来栄えとしては、正直なところ、どれも微妙に感じました。ひたすら歩きまわって、情報を集めて、試行錯誤を繰り返して、さくっとクリア。カタルシスや驚きというのは、あまりなくて「まあ、通勤時間を退屈せずに済んだかな」くらいの。
歯ごたえを感じたのは『すり寄れ!お年玉』です。後『チャレンジ!遠泳の夏』も何気に好きです。
パンタクル
ドルアーガの塔三部作で知られる鈴木直人による作品。
コアな人気を持っている様子でしたので、期待しつつ遊び始めたのですが、アプリとしては微妙でした。基本無料なのは嬉しいのですが、変なところに課金ポイントがあるのですよね。セーブポイントを解放させるのは、まだ良いのですが、『展覧会の絵』等に標準搭載されている戻る機能に相当する「ページに指をはさみつつ、先の展開をチラ見する」機能が課金だというのが、にんともかんとも……。
アプリならではのオートマッピングは助かるのですが、この課金のせいでやる気が出ません……と言うわけで、これは書籍を買って遊ぼうと思ってます。