雲上四季〜謎ときどきボドゲ〜

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2018年に出会えて良かったボードゲーム十選


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 人間もそうですけれど、ゲームもまた一期一会。
 こんにちは、秋山です。
 タイミングよく出会って楽しめるときもありますし、タイミングを誤ってすれ違ってしまうこともあります。2018年に遊んだ240作のボードゲームの内、ほんとうに気に入った10作を選びました。ご覧ください。

Holding On(ホールディング・オン)

 2018年に触れたゲームのなかで、もっとも印象深いのは、なんといってもこの作品『Holding On: The Troubled Life of Billy Kerr(ホールディング・オン:ビリー・キールの苦難)』です。
 毎年、10月にドイツはエッセンにて開催されているシュピールに、2018年も参加したのですが、参加前にBGGを見ては、ゲームのチェックを入念に行いました。昨今、国内のボードゲームパブリッシャーは、ほんとうに動きが迅速で、エッセンで新作が発売された翌月か翌々月には、日本語版が発売されたりします。新作だと浮足立って言語依存の激しいゲームを買っても、なんとか和訳して遊べるようにした頃に、日本語版が出てしまうとがっかりしてしまいます。果たして、エッセンでなにを買うか、も考えようによっては、ある種のゲームです。
 事前調査の段階で、秋山が注目していたのは物語性の強いゲームです。『アンドールの伝説』や『T.I.M.E.ストーリーズ』のように、日本でも1回しか遊べないボードゲームは人気ですが、日本語版が発売されるのは一部です。和訳難度やパブリッシャーの強さなどを鑑みて、最終的には現地で実物を見て判断します。
『Holding On』はBGGで知ったときから興味を覚えていて、宣伝動画を見て購入を確信し、現地で思っていたより箱が大きいことに腰が引けつつも「日本語化はきっとされない! ここで買わなかったら、一生、遊べない!」そう思って買いました。
……という、経緯を経て遊んだゲームですが、非常に奥深い内容で、涙を禁じえないストーリーでした。紹介記事にも書きましたが、ゲームというより文学に近しいイメージで、ある種の悲壮感すら漂わせている。果たしてゲームとしてどうなのかという議論はありますが、ゲームの枠組みを広げた、その可能性を問うた、という観点では評価できることでしょう
 和訳難度は極めて高く、日本では入手機会も限られますが、チャンスがあったら是非、最後まで遊んでいただきたい一作です。

Fuji(富士-脱出-)

 お次に紹介させていただくのも、エッセンシュピール2018で買ってきた新作です。
 ヴォルフガング・ヴァルシュによる新感覚の協力ゲーム『Fuji(富士-脱出-)』。これは、先だってホビージャパンより日本語版の発売が告知され、1月下旬には店頭に並ぶ予定です。
 上述の通り、エッセンでは「後に日本語化されそうなゲーム」は買わないように気をつけているのですが、やはりいくつかは新作を買い求めたいものです。その点、この作品は信頼がおけるデザイナで確実に面白いことが分かっており、言語依存が少なく日本語版が出た後も価値がなくなることはないなと判断しました。
 さて、ゲームに関してですが、非常に尖った協力ゲームでした。通常、協力ゲームは、全プレイヤが結託してひとつの目標に邁進するものですが、このゲームの場合、ちょっと変わっていて、なんでしょうプレイ感としては道の譲り合いなのです。全員が全員、自分の主張したいことだけを主張して、我を通そうとすると全員が沈むけれど、お互いが譲歩しあって道を譲り合えば、なぜかスイスイ進める、みたいな。今までの協力ゲームにはない感覚でした
 最初は勝手が分からず、もっとも低い難易度でも失敗していましたが、繰り返しプレイしているうちにコミュニケーションするべき場面というか、勘所が分かりはじめ、その要所を掴んだあとは、最高の難易度でもなんとかクリアできるようになってきました。
 たいていの協力ゲームに飽きた方でも手こずることでしょう。ご堪能ください。

ザ・マインド

 ヴァルシュの協力ゲームつながりということで、もうひとつ紹介させてください。
 いや、ほんと、2018年はヴァルシュの年でしたね。『ガンシュンクレバー』も『クアックサルバー』も激烈に面白く、どれを取り上げるべきか迷ったのですが、個人的には、やっぱり『Fuji』そして、この作品『ザ・マインド』でしょう。
『ザ・マインド』は……なんと言えばよいのでしょうか、発明だとか革命みたいな言葉では済まないでしょう。今風に言うと、特異点、でしょうか。マジでわけが分かりません。果たして、これがゲームと言えるのかどうか。ルールを聞いた時点では、さっぱり意味が分からなかったのですが、いざ、遊びはじめるとゲームになっているんですよね。
 ふしぎです、とてもふしぎです。
『ザ・マインド』がなんなのか、遊ぶたびに姿を変えるので、未だによく分かっていませんが、間違いなく忘れられないゲームです。

DECKSCAPE TEST TIME

 これは少し前の作品ですが、謎解き系のゲームです『DECKSCAPE TEST TIME(デクスケープ:テストタイム)』
 いわゆる、一度しか遊べないタイプのゲームですが、コスモスから出ている『イグジット』シリーズとの差異としては、あちらがコンポーネント破壊を行うため、物理的に一度しか遊べないのに対し、こちらは一切のコンポーネント破壊がないので、プレイヤを変えれば何度でも繰り返す遊ぶことができます。
 また、多くの謎解き系のゲームが「謎を解かないと次に進めない」という形式を採用しており、それが故に「謎が解けないと最後まで遊べない」という構造的欠陥を抱えているのですが、この『DECKSCAPE』シリーズは、謎カードの裏には必ず解答が書いてあり、どんなに謎解きが苦手なひとであっても、繰り返し間違えたとしても、絶対に最後まで辿り着くことができます
 このスタイルは、とても好ましく感じます。カードだけで完結し、箱やゲーム外を意識する必要がないのも好印象です。現在、シリーズ第4弾まで出ていますが、引き続き5弾以降も続いてもらいたいと強く思います。

メディチ

 ここで、ガラリと様相が変わりますが、クニツィアによる3大競りゲーのひとつ『メディチ』
 多くの方は、おそらく「何故、この流れでメディチが……?」と唖然としていることでしょう。
 そう、ボードゲームを真剣に遊び始めて8年。実は、この名作と名高い『メディチ』を初めて遊んだのです。そして、その奥深さに痺れまくりました
 いやあ、すごいゲームですね、これ。自分で言うのもなんですが、たいていのゲームは、ルールブックを読むかインストを受けた段階で、デザインがなんとなく分かります。どこが面白がるポイントで、どのようにすれば勝てるのか、デザイナがなにを思ってこのゲームを作ったのか、おぼろげに見えます。
 重めのゲームには、1回やってみないと分からないものもありますし、複雑なデザインだと、1回では見渡せず、複数回のプレイを要するものもあります。しかし、どこにも取っ掛かりがない、マジでさっぱりわけが分からないゲームもあって、それが、この『メディチ』です。
 極めて不可解です。プレイ中、瞬間瞬間では、すべきこと、方針は見えるのですが、全体で最適化できないんですよね。カード運の影響を受けますし、他プレイヤの動向ひとつで容易に瓦解します。あるいは、そう感じるのは、まだ理解しきれていないからで、ゲームを遊んでいるのではなく、遊ばれているのを感じます。
 悔しいです。
 あまりに悔しかったので、買ってしまいました。
 買って満足してしまい、買ってからは遊んでませんけれど。
 2019年は研究したいですね。何故、このゲームが面白いのか。まだ直感でしか感じられていない、ばくぜんとした面白さを言語化したいです

コントラクトブリッジ

 新作が中心のベスト10と思いきや、いきなり1995年の『メディチ』が飛び出て、さらには1900年台初旬と言われる、トランプを使って遊ぶトリックテイキングの名作『コントラクトブリッジ』を出してしまってすみません。
 いやあ、ついに、その門を叩いてしまいました。
 実は以前にも遊んだことがあります。2015年に赤桐さんの『トランプゲーム大全』を見ながら、遊びました。しかし、当時は勝手がわからないまま、勝手がわからないメンバーで遊んだので「ま、こんなものか」で終わってしまったのです。
 ひょんなことから、草場さんの説明を聞きながら遊んだのですが……いやあ、やられましたね。あまりに深く、楽しむに至るには何年も要するので、ボードゲームにすっかり飽き、時間を持て余すであろう老後の楽しみに取っておいたというのに、うっかり入り込んでしまいました
 とは言え、まだ本格的に遊び始めたわけではありません。ほら、真剣に遊び始めたら、すべての時間が吸い取られてしまいますからね。でも、確実に魅力を知ってしまって、なんとかして逃げたいなあ、でも抗えない、とか、そんな感じです。今は、まだ恐る恐るですが、そのうち寝ても覚めてもブリッジブリッジ言い出すかもしれませんが、そのときは優しく見守ってください。

たった今考えたプロポーズの言葉を君に捧ぐよ。

 ここからは国内ゲームのコーナーです。
 筆頭はCRIMAGEさんの『たった今考えたプロポーズの言葉を君に捧ぐよ。』です。
 これは、コミュニケーション系ゲームの傑作です。何が素晴らしいかって、誰も不幸せにならないのが素晴らしいです。コミュニケーションゲームって嫌いではないので、よく遊びますけれど、得意な方ではありません。他プレイヤをイジらないといけなかったり、下ネタが多分に含まれるゲームは、不得意どころか苦手なくらいです。
 その点、このゲームは、とにかくポジティブです。何しろ、プロポーズの言葉ですからね。プレイヤによっては、やや下ネタっぽくはなりますが、気になるほどではありません。最初から最後まで、誰も傷つくことなく朗らかな気持ちで遊ぶことができる。うん、これ以上、言葉を重ねる必要はないですね、傑作です。

横濱紳商伝デュエル

 ちょっと褒めすぎでしょうか? それでも、2人専用のワーカープレイスメントで、ここまで面白いのは、そうそう思い浮かばないので仕方ないですね。と言うわけで、OKAZU brandさんの『横濱紳商伝デュエル』は、マジで面白いです。
 何が良いかって、ちょうど良いあんばいなんですよね。ようやく準備が整って、加速し始めたタイミングで終息する、みたいな。ウヴェ・ローゼンベルクの『アルルの丘』も、かなり面白いと思いますが、ラウンドごとに出来ることが増えていく、拡大再生産的な楽しさ、喜びで言えば、こちらの方に軍配があがります。
 林さんのデザインという観点では『ストックホールデム』に共通しているところもありますね。あちらも「面白くなってきたぞ!」と、盛り上がってきたタイミングでゲーム終了のタイミングを迎えるので、ダレることがないというか、「面白い!!」という気持ちでゲームが終わるので、評価が良くならざるを得ないのですよね。
 充実感のあるワーカープレイスメントが遊びたい、それも2人で。という方にうってつけです
http://www.unjyou.com/entry/2019/01/25/180000

百科審議官

 数寄ゲームズさんには感謝しかありません。
 リアル謎解きゲーム界隈では、知る人ぞ知る千石一郎さんですが、2006年に『百科審議官』というワード系のゲームを手掛けられていて、伝説的なゲームでした。コンポーネント的には、紐と付箋、後はてきとうなコマさえあれば良いので、100円ショップに行ったらぜんぶ揃えることができますが、やっぱり遊ぶからには正規のコンポーネントで遊びたいですし、デザイナに還元したいです。
 と言うわけで、ずっとずっとずーっと気になっていた『百科審議官』を、ようやく遊ぶことができました。いやあ、面白いですね! 違うひとと遊べば、まったく違う感じの展開になりますし、同じひとと連続して遊んでもやっぱり面白いです。
 言葉の可能性と言うか、日本語の可能性に挑戦したところのあるゲームなんですが、元々、本読みであったということもあって、余計に面白く感じます。ぜんぜん似てないんですけれど『詠み人知らず』が楽しめるひとは、きっと楽しいです。

アンドールの伝説 最後の希望

 最後は、同じメンバーで基本セットから『星の盾』、そして『北方への旅立ち』を経て、辿り着いた最後の拡張『アンドールの伝説 最後の希望』です。
 これについては、もう想いが深すぎるというか、あまりに多くの時間を費やしてしまったので、おいそれと言葉にできません
 ゲームとしてという観点では、いやはや、アンドールの世界観には、まだまだ、こんなにも可能性があったのか! です。ふつうに考えて、同じことを何度もやらされるのは苦行です。特に、ダイス運によってミッション失敗した場合、同じマップで、同じストーリーを繰り返すことになるのですから。
 しかし、これもディベロップメントのなせるわざなのでしょうか。よっぽど調整されているのか、ほとんど不条理な目に合わず、何度遊んでも、これが飽きないんですよねえ。むしろ、遊べば遊ぶほどにその面白さを再確認するくらいです。
 楽しい旅路でした。ありがとうございました。

#FINDART

 最後の最後にもうひとつだけ、11作目になっちゃいますけれど、次点として取り上げさせてください。お絵描き系のゲームに含まれるのか、コミュニケーション系のゲームに含まれるのか、あるいは、そもそもゲームに含まれないのか?
 けっこう瀬戸際な感じではありますが、間違いなく面白いのです『#FINDART』は。
 正直、ルールを読んだときは困惑しました。これの、どこがゲームなのだろうか、と。でも、遊んでみた瞬間に感じました。これは、最高に面白いですし、盛り上がります。Don't think feel!!、現場からは以上です

終わりに

 ずいぶん長々と書いてしまいました。
 ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
 2018年は、ほんとうに縁あって、多くのゲームを素敵なかたちで遊ぶことができました。今年も、良いゲームに出会えますように。

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