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ボードゲーム『パンデミック:レガシー シーズン0』の感想(ネタバレなし)

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 ボードゲーム史に残る傑作協力ゲーム『パンデミック』シリーズの最新作『パンデミック:レガシー シーズン0』を遊びました。
 ネタバレには配慮していますが、気になる方は回れ右推奨です。

何故、ネタバレ注意なのか?

 謎解きゲームでもないのに、どうしてネタバレ注意なのかについて最初に説明します。
 本作の大元になった『パンデミック』は2008年に発売されたボードゲームで、プレイヤー同士が協力して世界中に拡散しつつある4種類の感染症の根絶を目指す協力ゲームです。ボードゲームですので、繰り返し遊ぶことができるもので、ネタバレも何もあったものではありません。
 しかし、『リスク:レガシー』(2011)の影響を受けた『パンデミック:レガシー シーズン1』(2015)は違います。1回約60分のゲームを連続して遊ぶ、ある種のキャンペーン系のボードゲームです。しかし、既存のキャンペーン系と一線を画すのはレガシー(遺産)要素があるからです。
 レガシー要素とは即ち、カードやボードにシールを貼り付けたり、新たなコンポーネントやルールを加えるアップデート行為や、実際にカードを破いて破棄するという後戻りの効かない行為を指します。プレイヤーは、あらゆる場面で判断を迫られ、自分たちの意志の元、カードやボード、その他コンポーネントに対して手を加え、自分たちだけのゲーム、自分たちだけのストーリーを構築することになります
 この構築する、という部分がレガシー系ゲームの核となるため、その楽しみを削がないためにネタバレを避ける。ボードゲームなのにネタバレ注意の文化があるのは、このためです

『パンデミック:レガシー』シリーズについて

 前置きが長くなりましたが、そろそろ『パンデミック:レガシー』シリーズに入りましょう。
 本作は、今までに計3作が発売されています
『シーズン1』(2015)、『シーズン2』(2017)そして、本作『シーズン0』(2020)です。

 ナンバリングが3ではなく0となっているのは、時系列的に『シーズン1』が現代、『シーズン2』が未来を舞台としているのに対し、『シーズン0』は1962年というアメリカ合衆国がソビエト連邦と戦っている冷戦を舞台としているからです。
 ナンバリングだけを見ると『シーズン0』から遊び始めて『1』、『2』が良いようにも思えますが、遊ぶ順番という観点では、素直にリリース順、即ち『1』、『2』、『0』がオススメです
 ちなみに『1』には通称赤箱と青箱の2種類、『2』には通称黄箱と黒箱の2種類がありますが、箱のパッケージアートワークが異なるだけで、内容物に一切の違いはありません。好みの絵柄のものを購入されると良いかと。

『パンデミック』シリーズについて

 そろそろ感想に入りたいのですが、もう少し周辺をおさらいさせてください。
 基本となる『パンデミック:新たなる試練』には『パンデミック:迫りくる危機』『パンデミック:科学の砦』『パンデミック:緊急事態宣言』と3種類の拡張が発売されています。これらは、いずれも基本の『パンデミック』に対して要素を加える、まさしく拡張となります
 一方で『パンデミックカードゲーム:接触感染』『パンデミックダイスゲーム:完全治療』『パンデミック:迅速対応』などは、タイトルにパンデミックと含まれていますが、世界観を共有しているだけで、ゲームとしては別物です(『接触感染』に至っては、協力ゲームですらありません)。
 近年は『パンデミック:クトゥルフの呼び声』『パンデミック:イベリア』『パンデミック:ライジングタイド』『パンデミック:ローマの落日』『パンデミック:ホットゾーン』などの『パンデミック』と近しいプレイ感ではあるものの、ルールが大きく異る、そして基本を必要とせず単体で遊べる言わば外伝とも言える作品がリリースされています
 私は、すべてをプレイ済みで、またほとんどを所有しているので、いずれまとめの記事を書きたいなと思っているのですが、それは他の機会にさせてください。

『パンデミック:レガシー シーズン0』の感想

 ほんとうに、前置きが長くなりましたが、そろそろ本題に入りましょう。
『パンデミック:レガシー』が発売された年の恒例として、年末に『パンデミック:レガシー』を遊ぶだけの日を設け、ぺこらさんと2人で集中的に遊びました。
 クリアに要した時間は、約22時間
 エンディングを迎えた後はしばし呆然とし、にわかには現実世界に戻ってこれないほど濃密な物語体験に浸りました。


 ネタバレを避けるために、なるべく本作に関する話題は耳に入れないように注意していたのですが、それでも漏れ聞こえていたのは、本作が『パンデミック』ではないということです
 いったい、どういうことなのだろう?
 ふしぎに思っていましたが、プロローグを遊んで納得しました。
 上述しましたが『パンデミック:新たなる試練』に始まる『迫りくる危機』『科学の砦』『緊急事態宣言』にレガシー要素を加えたものが『シーズン1』であり『シーズン2』であるならば、『シーズン0』は近年の『クトゥルフの呼び声』『イベリア』『ライジングタイド』『ローマの落日』などの外伝的作品にレガシー要素を加えたものとなります
 従って、原理主義的な観点からすると『パンデミック』ではなくなりますが、細かいことを気にしなければ『パンデミック』ですし、この素晴らしい『パンデミック』シリーズの世界を広げるという観点では、間違いなく『パンデミック』シリーズの最新作と言えます。


『パンデミック』かどうかなんて、実際、些細な問題です。
 迷いなく、シンプルに、とにかく、最高に、激烈に面白かったです
 協力ゲームとしての難易度は、実に適切と言わざるを得ないでしょう。一瞬の油断が命取りとなり、その月に失敗の烙印を押して終わらせてしまうことはもちろん、盤面に癒せない傷を残すことになります。
 物語における決断も同様です。それまでの物語を振り返り、些細な表現に隠された真相を想像し、耐えず先を読んでいかなければCIAの苛烈なミッションはこなせません。
 まさに鬼気迫る真剣勝負と言えるでしょう。
 それでいて不可能ではないのです
 ちゃんと考え抜き、リスクを考慮し、ランダム要素のギリギリの瀬戸際を攻めれば、十分に勝利できる余地のある難易度なのです
 これぞパンデミック。
 これぞパンデミック:レガシーです。


 22時間にわたる激闘を共にしてくれたぺこらさんに感謝しつつ、この素晴らしいゲームが、より多くの方々の間で楽しまれることを心から望みます。

ホビージャパン パンデミック:レガシー シーズン0 日本語版

ホビージャパン パンデミック:レガシー シーズン0 日本語版

  • 発売日: 2020/10/25
  • メディア: おもちゃ&ホビー

一緒に遊んだぺこらさんとのラジオ

終わりに

 最終的な点数は985点でした。
 歴代の『パンデミック:レガシー』の中でも、もっとも良い成績が残せたように感じます。このシリーズは、正直、点数ではなく、その1回限りのプレイを、どれだけ楽しめたかがポイントであるように思いますが、それでも高得点なのは嬉しいですね。
 さて、次は『シーズン3』でしょうか、それとも新シリーズとなるのでしょうか。いずれにせよ、大好きなシリーズなので、これからの発展も期待大です。