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ゲーム『火吹山の魔法使い』の感想

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 Switchでダウンロード可能な、名作ゲームブック『火吹山の魔法使い』のデジタルゲーム版を遊びました。
 デジタル化にあたって随所に変更点があり戸惑いましたが、単発の作品としては完成しているなと感じました。

『火吹山の魔法使い』とは

 そもそも『火吹山の魔法使い』について。
 スティーブ・ジャクソンとイアン・リビングストンによるゲームブックで、原作は1982年に刊行され、1984年には社会思想社より日本語版が発売されました。
《ファイティング・ファンタジー》シリーズの第1巻で多くの続刊があり、名作ゲームブックの古典であり代表作でありながら、未だ傑作と名高いです。私は2005年に扶桑社が復刊したもので遊びましたが、色褪せない作品だなと感じました。

 現在はグループSNEが再度の復刊を進めています。

Switch版『火吹山の魔法使い』

 前段が長くなりましたが、いよいよSwitch版について。
 遊び始める前までは、いわゆるサウンドノベル的なものを想像していました
 画面いっぱいに文字が表示され、選択肢が表示され、選択に応じて次の展開が決まるというスタイルです。
 しかし、遊びはじめて、すぐに想像の斜め上だったなと気付かされました。


store-jp.nintendo.com


 最初の驚きは、主人公を選ぶ点です。
 4人のビジュアルとステイタスの異なるキャラクターが用意され、その4人の中から、今回の冒険における主人公を選択するのです。キャラクター毎に固有のスキルを持っており、ダンジョン内での展開に差異が生まれます。
 ゲームが始まった後も驚きました。
 選択したキャラクタは、ウォーゲームやTRPGにおけるフィギュアのように表現され、用意されたダンジョン内をぴょこぴょこぴょこと移動していくのです。分かれ道に差し掛かると、長文が表示され、その後、どちらのルートを選ぶか選択肢が提示され、どちらかを選ぶと、選んだ方にフィギュアがぴょこぴょこ移動します。
 ゲームブックを遊んでいるというより、デジタル化されたTRPGを遊んでいる印象です
 そして、最大の驚きは戦闘です。
 戦闘は原作とは大きく異なり、いわゆるローグライクなバトルになっています。たとえば3マス×4マスのフィールドに、主人公コマと敵コマが置かれ、1ターンに一歩ずつ移動、もしくは攻撃が可能で、自分のHPがなくなる前に敵を倒し切ることができれば勝利です。
 また、途中で気付いたのですが、主人公ごとに、この冒険に挑む目的が設定されており、その目的を果たしたら帰還するという選択肢が提示されるのです。つまり宝を得ることも、魔法使いと対峙することもなくエンディングを迎えられるのです……!


 原作のファンからすると、正直なところ違和感を禁じえません
 しかし、デジタルゲームとしての完成度を考えると、これはひとつの方向性としてありですし、このデザインにすることで裾野が広がりうることを考えると、ぜんぜんありです。むしろ、至極まっとうと言えます。
『火吹山の魔法使い』の原理主義的なファンは首を傾げるかもしれませんが、名作ゲームブックに興味があって、しかし今さら本を入手して、ちまちまとページを繰るのは面倒と思っている方は、このデジタルゲーム版で触れるのも悪くないでしょう

終わりに

 個人的には『火吹山の魔法使い』の成り立ちや背景が、あとがきや解説のように用意されていたのが嬉しかったです。
 知らないことも多かったので勉強になりましたし、面白く読むことができました。