雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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舞台『SaGa THE STAGE ~七英雄の帰還~』の感想

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 DVDで舞台『SaGa THE STAGE ~七英雄の帰還~』を視聴しました。
 原作は1993年にスクウェアより発売された、スーファミ用ソフト『ロマンシング サ・ガ2』。世界観監修・脚本原案は、原作のディレクターでもあった河津秋敏氏、脚本はとちぼり木氏、音楽は伊藤賢治氏、そして演出にして主演は佐藤アツヒロ氏。
 非常に素晴らしい作品だったので感想を書きます。

『ロマサガ2』の思い出

 スキあらば自分語りをしたい性なのでしてしまいますが、人生でいちばん好きなRPGは『ロマンシング サ・ガ2』です
 ループものをはじめ、あらゆる時間をテーマとした作品が大好物ですが、もしかしたら、その原点は本作がきっかけかもしれません。
 未プレイの方に、かるく説明しますと『ロマサガ2』は、バレンヌ帝国の皇帝と七英雄の戦いを描いたゲームです。七英雄はあまりに強大な存在で、ただの人間が相手することはできません。そこで、プレイヤーは「伝承法」という術を使います。これは、皇帝から皇帝へ、たとえ血の繋がりがなくとも、自身が鍛えた技や術を継承していくという能力で、このちからを駆使することで、プレイヤーは七英雄に挑みます。

『ロマサガ2』の思い出、その2

『ロマサガ2』に限らずサガシリーズの物語や世界観は、わりと難解で、子どもが理解するのにはハードルが高いです。当時、小学生だったわたしは、


どうして英雄なのに、モンスターみたいな外見をしていたり、敵だったりするのだろう? どうして和解できないのだろう?


 と思いつつも、おさなごころにレオンとヴィクトールの死に衝撃を受け、彼らの命を奪ったクジンシーに対してつよい憎しみの気持ちを抱き、ジェラールと共に「七英雄、絶対に許さない!!」と誓いを立てたことを覚えています。

『ロマサガ2』の思い出、その3

 昔はゲームの供給量が少なく、ひとつのゲームを繰り返し遊ぶ傾向にあったように記憶しています。
 あるとき「もう一度『ロマサガ2』を遊ぼう」と思い立ち、童心を振り返りつつ懐かしく遊んでいたら、エイルネップ神殿で異次元への転移装置を知り、その後、古代人が隠れ住まう忘れられた町を訪れ、そこではじめて七英雄の真実を知りました。
 七英雄は、その名の通り英雄だったのです。かつてモンスターを倒すために「同化の法」を用い、モンスターのちからを吸収し人間社会を守りつつも、それによって異形の姿と化し、人々に疎まれ異次元に転送されたものの、長い時間をかけて帰ってきたのです
 そして、その七英雄を討つバレンヌ帝国皇帝も「伝承法」を用い、代々の技と術を継承しており、七英雄と近しいちからを使っています。
 ただの勧善懲悪だと思っていた物語が、一変した瞬間を感じました

『LORD of VERMILION』の功績

 おとなになってから気づいた七英雄の魅力でしたが、ゲーム本編の主人公は、あくまで皇帝。七英雄の過去や真実に関する説明は断片的で、プレイヤーにできるのは、それらを拾い集め、空想するだけです。
 転機が訪れたのは『LORD of VERMILION』に七英雄がゲスト参戦したときでしょう。フレーバーテキストのなかに七英雄の関係性や過去が想像されるメッセージがあり、わたしを含め七英雄ファンは狂喜したことでしょう。
 あるいは、これを契機に、七英雄を深堀りしようというアイデアが河津秋敏氏の頭に浮かんだのかもしれません。

『SaGa THE STAGE ~七英雄の帰還~』の感想

 前段が長くなりましたが、そろそろ本題となる『SaGa THE STAGE ~七英雄の帰還~』の感想に入っていきましょう。



 本作は、いわゆる2.5次元です。
 2次元のゲームを原作に持ち、コスプレのように俳優が原作同様の衣装をまとい、武器を振るい、音響等で魔法を表現する、2次元と3次元の中間に位置するコンテンツです。
 抵抗があるひとが多いコンテンツでもありますが、わたしは新しい創作の形として素晴らしいと思いますし、好んで見ます。
 とは言え、2.5次元は原作をうまく表現できていなければ原作ファンにそっぽを向かれますし、若手俳優の演技がうまくなければ演劇ファンにそっぽを向かれますし、なかなか難しい領域ではあります。
 視聴にあたって不安がなかったかと問われれば、ないとは言い切れませんでした
 しかし、実際に見終えた今、感想としては……、


妥協が一切なかった。おそらく佐藤アツヒロ氏の演出レベルが高く、殺陣も本格的だったし、一瞬たりも現実世界に引き戻される瞬間がなく、ずっと物語世界に没入できていた。それに、脚本原案が河津氏本人ということは、実質原作。ここで語られた七英雄の過去や、彼らの想いは真実……!


 と言うわけで、100点満点の素晴らしさでした。
 テクニック的には、七英雄を主役に据えた、というのが最大の勝因でしょうね。原作ゲームの展開を、丁寧に追おうとしていたら、どんどん乖離が発生したり、シーンを追うだけの薄っぺらい内容になっていたような気もします。
 徹頭徹尾、七英雄を中心として、後半の主役であるレオン、ジェラール、ヘクター、最終皇帝(女)も、七英雄を倒すための存在としていたのが良かったです。
 後は、やっぱり原作ファンへのサービスですよね。
「流し斬りが完全にはいったのに」や「アリだー!」とかはね、良かったですね。
 敢えて言うとベアかな。ヘクターを出すなら、ベアの「パリィ!」も欲しかったですが……わがままは言いません。

キャストさんについて

 出演されていたキャストさんの演技について感想が抜けていました。
 いちばん目で追ってしまったのは、クジンシー役の細貝圭さんです。元々、七英雄のなかでは、いちばんクジンシーが好きで、この舞台でもどのように演じるのか気になっていたのですが、実にクジンシーらしく「そうそう、これこれ!」という気持ちになりました。
 可愛らしさで言うと、ロックブーケ役の山田菜々さんが素敵でした。七英雄のなかでもロックブーケは不遇と言うか、討たれる必要はなかったのでは? と思わないでもないのですが、この舞台では彼女の、ノエルとワグナスを想う一途さが表現されていて、良かったです。

終わりに

 原作ファンには、心からオススメします
 脚本原案が河津秋敏氏なので間違いありません! クォリティも高いですし、満足すること間違いなし! オススメです!!