SCRAPのきださおりさんが手掛けたインサイドシアターシリーズの最新作『オンラインパパラッチ 新郎失踪の真相を暴き出せ』を遊びました。
ネタバレ解禁済みの作品ですので、ネタバレは特に気にせず自由に感想を書きます。
イベントの概要
証拠写真をリアルタイムでツイートし物語の結末をあなたが決める、観客参加型のオンライン演劇
https://realdgame.jp/online_reald_summerfes/contents-insidetheater.html
依頼内容は
『星健一がいなくなった時間の監視カメラ映像を見て、
マスコミに勘付かれる前に、彼の居場所を突き止めること』
タイムリミットは残りわずか。彼が消えたのは事件か、はたまた芸能界の陰謀か?!
監視カメラ映像から真実を暴き出し、新郎新婦の運命を変えることができるのだろうか。
本作は、インサイドシアター(Inside Theater)シリーズの4作目に位置づけられます。
シリーズ1作目の『シークレットカジノ』と2作目の『僕等のラストフェスティバル』は、インサイドシアターの名の通り、劇場の内側に入り込むような体験ができるというもので、オンラインイマーシブシアターと言えるものでした。
参加者は複数用意されたチャンネルを自由に行き来しながら、好きなようなコンテンツを楽しみつつ、後半は他の視聴者と協力し、物語のグッドエンドを目指すというゲーム的な要素も持つのが特徴です。
一方、3作目の『オンラインパパラッチ 企業の不正を暴き出せ』は1日限りのイベントで、演劇外要素も多く、最初から協力することや目的が明示されます。体感としては、プレイヤーのひとりひとりがゲームに向き合う個人戦ではなく、他視聴者と協力しあってグッドエンドを目指す全体戦です。
本作はインサイドシアターシリーズの第4弾ですが、同時にオンラインパパラッチの名も冠しており、系統としては3作目の『企業の不正を暴き出せ』の続編と位置づけられます。
イベントの感想
わたしは『君は明日と消えていった』の頃から、きださおりさんのファンで、その作品を追いつづけていますが、現代日本における注目すべきクリエイターのひとりであると、改めて感じました。
すこし前に、岸井大輔氏、米光一成氏、大岩雄典氏の『物語に参加させるとはどういうことか──リアル脱出ゲーム、インスタレーション、参加型演劇、儀式』というトークショーを視聴させていただきました。
本イベントでは、様々な作品や研究、体験を紹介しながら、リアルに「物語へ参加させるとはどういうことか」について議論します。演劇・ゲーム・美術の批評に関心がある方はもちろん、リアル脱出ゲーム、マーダーミステリー、TRPG、人狼ゲームなどのファンの方、リアリティショーのマニアの方、絵画でもオブジェでも映画でもない何かを作ろうとしているアーティスト志望者の方、またそうした表現のファンの方に必見のイベントです!
https://sengenbango.jp/?p=647
得るところの多いトークショーだったのですが、印象的だったのは劇作家の岸井大輔氏が、演劇を標榜しているきださおりさんと、劇団ノーミーツさんに感謝していると言った場面です。記憶があいまいですが「両者とも、やっていることは従来の演劇じゃないのに、演劇と言ってくれて助かる」みたいなニュアンスだったように覚えています。
この部分を鮮烈に感じたのは、わたしも同じ感覚を持っていたからです。きださおりさんと劇団ノーミーツさんの作品は、どちらも演劇であって演劇でないと言うか、その枠組をおおきく超えているように感じています。
本作もキャッチフレーズを見ると「観客参加型のオンライン演劇」と書かれていますが、参加の要素がおおきく、演劇と言うよりゲームに近しいです。
この話は、ここで終わりで結論を待たれていた方には、申し訳ないのですが、これからも、ぜひ一緒にチェックしていきましょう。
さて、本作につきまして、わたしは、ほとんど「参加」しませんでした。
もちろん「視聴」はしました。しかし、能動的にスクリーンショットを撮って、Twitterに貼り付けて、全体の推理進行に貢献したり、判定に寄与しませんでした。
敢えて言うなら、開始前の試し撮り(?)のタイミングでスクリーンショットを撮ったくらいです。
かなり、良いショットでは?#オンラインパパラッチ pic.twitter.com/GBnyMn77GB
— あきやま まこと AKIYAMA Makoto (@unjyoukairou) 2021年9月20日
手元のスマートフォンで#オンラインパパラッチを追っていたので、なにが分かっているのかは追えていましたし、何よりも視聴することに集中していたので、双子が入れ替わる瞬間や、偽装誘拐の瞬間は、まさに目撃していました。
やるべきことも分かっていたので、新郎を会場に返送すべく手を動かすこともできましたが、実際にそうすることはせず、見ることに集中しました。
そのようにした理由は、わたしのエンターテインメントに向き合う姿勢が「理解したい」に根ざしているからです。
確かに物語に参加するのは楽しいです。自分の行動によって物語の結末が変化し、グッドエンドに近づくならば、得られる感動もひとしおでしょう。
しかし、本作は1回限りのイベントで、役者さんの演技は、1回しか見ることができないのです。だとすれば、
物語に参加している余裕はない、見ることに集中しなくては!
と、決めたのでした。
終わりに
上述の通り、本作は「観客参加型のオンライン演劇」と銘打たれていますが、演劇の枠は超越しており、もちろんただのイマーシブシアターでもなく、なんなら謎解き、ゲーム、オンライン公演……いかなる表現にも収まらない、まったく新種のなにかであるように感じました。
いちばん近いのは、お祭り、かもしれませんが、もっと適切な言葉があるような気もします。
うまく予定を調整し、この1回限りのイベントを楽しめて良かったです。これからも、きださおりさんの手掛ける作品からは、目が離せません。