雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

オススメの謎解き&ボードゲーム&マーダーミステリーを紹介しています

2023年8月に遊んだり触れたりしたもの


 皆さん、こんにちは。秋山です。
 8月に遊んだり触れたりしたものを振り返ります。

黒川の手帳はもう語らない

アンフィスバエナと聖女の祈り

ゲシェンク

ナナトリドリ、ミスターダイヤモンド、リフトフォース、地下迷宮と5つの部族

SAND LAND

メタモルフォシス、コンドルホイスト、レオパルド

イモータリティ

Limbo

AirborneKingdom

逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』

 深い溜め息と共に読了。圧倒的なまでのリアリティで、小説の持つ力を再認識。優れた物語は、触れるひとの価値観を揺さぶる。そうさせるパワーを、本書は高い熱量で抱えている。読了後に改めて登場人物一覧を確認、名前の向こうに広がる背景、世界、ありえたかもしれない人生に思いを馳せる。

佐藤究『爆発物処理班の遭遇したスピン』

 パンチ力のある短編集。熱量の高い作品ばかりが揃っていて、ネタ一本で長編が書き上げられそうなのに、凝縮して短編にしているから密度が濃い。気に入ったのは表題作の他、ジェリーウォーカー、スマイルヘッズ、ボイルド・オクトパス。

麻耶雄嵩『化石少女と七つの冒険』

 恐ろしいとしか言いようがない。前作読了時点で、果てしのない闇を覗き込んだような気がしたけれど、前作は、まだ優しさがあった。諧謔と言うか、ブラックな笑いと言うか、キッチュの範疇だったけれど、本作のそれは、もはや狂気。分かった瞬間に鳥肌が立ったし、今となっては可愛らしい表紙イラストも悪意たっぷりに見える。

新川帆立『令和その他のレイワにおける健全な反逆に関する架空六法』

 架空の法律が支配する、ありえたかもしれない日本の物語。法律が変わるということは、常識が変わるということで、ある種のパラレルワールドSFのように読んだ。面白かったのは「動物裁判」と「接待麻雀士」。

知念実希人『硝子の塔の殺人』

 本格を下敷きにして、クイーンやカーを基礎教養とすることを求めるのが新本格であるならば、本書はさながら新本格を下敷きに綾辻行人などを基礎教養とする新・新本格だなと感じた。近年の重要なテーマをまんべんなく散らし、ちょうどいいバランスの作品でした。

杉井光『世界でいちばん透きとおった物語』

 電子書籍化不可能、紙の本でしか味わえないと聞いて着手。仕掛けに気付いたのは、ちょうど半分ほど読み進めたところで驚嘆した。着想自体はありえたかもしれないけれど、きちんと物語と仕掛けを有機的に繋げたことに加え、諦めずに向き合った根気強さに脱帽。杉井光だから感動的なものにできたけれど、これが清涼院流水だったら、ギャグになっていただろうな……。

『スタートボタンを押してください』

 ゲームがテーマと聞いて「読まざるをえない!」と思った1冊。桜坂洋に始まり、ケン・リュウに終わり、解説は米光一成と完璧な布陣。バリエーション豊かで面白かったけれど、敢えて言うなら現実世界に対するゲーム(架空世界)の対比関係をテーマとした作品が多かった気がして、まだまだゲームはそのように捉えられているのか、と。特に気に入ったのは「救助よろ」「1アップ」「リコイル!」「キャラクター選択」「ツウォリア」「アンダのゲーム」当たりが多かった。

青柳碧人『クワトロ・フォルマッジ』

 タイトルからピッツェリアを舞台に繰り広げられる日常の謎連作短編と思いきや、一風変わった広義の長編ミステリーだった。パッと見は、ただの店員だけど実は……な面々による、それぞれの視点で語られる物語は、意外性のある展開の連続で、ジェットコースターのように楽しめた。

竹町『スパイ教室01 《花園》のリリィ』

 先にコミカライズを読んでしまったので、ネタを知ってしまったのだけれど、原作小説においては、どのように仕掛けていたのかが気になって読んだ。思い返せば久しぶりのライトノベルだったけれど、とても楽しめた。

西岡杏『キーエンス解剖 最強企業のメカニズム』

 キーエンスに関する本を読んだのは2回目だけれど、非常によくまとまっていたし、この概念に触れるのは2回目なので、より深く理解できた。再認識したのは持久力と柔軟な筋肉。営業と言うよりマラソンランナーという印象、非常にストイックに取り組み続けている。真似できるところもあるし、とても無理なところもある。でも、せっかくだから少し取り入れてみたい。

森川智喜『動くはずのない死体 森川智喜短編集』

 トリッキィかつ遊び心に富んだ5作からなる短編集。特に好みだったのは「フーダニット・リセプション」と「ロックトルーム・ブギーマン」の2作。特に後者はベッドの下や物陰に瞬間移動できる超常の存在が犯人であり、そんなブギーマンによって作られた真密室を破るという特殊設定ミステリ。面白かった!

古野まほろ『ロジカ・ドラマチカ』

『九マイル』を、古野まほろらしい、けれん味たっぷりの文体と、いっそ偏執的なまでの拘りで論理論理こねくり回し、意外な真相に持っていくのが面白い。正直、読んでいて疲れたし、なんなら一部読み飛ばしもしたけれど、アクロバティックな着地は、いずれも素晴らしかった。後はエンディング、こんな甘々な結末に辿り着くことになるとは夢にも思わなかったけれど、あるいはふたりが甘党であることが伏線だったのかもしれない。