雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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AFTER THE END

 夜も更け、馴染みのラジオ番組も終わりを告げる刻限――娘は、静かに自分の身体を抱きしめた。
 その晩もそれはやってきた。心の奥底に封印しきることができず、漏れ出してしまう誰かを恋しいと思う気持ち。独りでいることが我慢できなくなる夜がやってきた。
 ラジオのスイッチを切り、ノートからも顔を上げ、娘は立ち上がった。
 ベランダの外には、満点の星空が広がっていた。ひんやりとした夜気が、火照った娘の身体を醒ます。それで、彼女はほんの少しだけ冷静になった。
 そして思い出す。
 彼女は独り。
 この破滅した地上に唯一生きるもの。
 振り返ればとうの昔に朽ち果てたノートと、雑音すら流すことのなくなったラジオ。
 どうして崩壊し終わった後の世界に、自分が生きているのかは判らない。きっと、今の自分は死ぬ直前に見ている夢なのだと彼女は思う。自分だけが際限なく引き伸ばされた世界の中に取り残されて、他のすべては等しく時に押し流されているのだ。
――これは自分の幻想に他ならない。そう思い込もうとしたがそれでも、
 誰かを恋しく思う寂しさは、まぎれなかった。


『引き伸ばされた終焉』473文字