- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/11/28
- メディア: 文庫
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第五回新潮ミステリー倶楽部賞、受賞作。あらすじからファンタジィ的なものを想像していたのだが、史実を織り交ぜたり、現代人である主人公に客観的な視点を与えることで、最低限のリアリティは保持されている。よく言えば慎ましいのだが、悪く言えば冗長で、人によってこの作品を駄作と思うかもしれない。「ここには大事なものが、はじめから、消えている。だから誰もがからっぽだ。/島の外から来た奴が、欠けているものを置いていく」という島に伝わる言葉が、作品を通じて重要な意味合いを持っていて、それが何であるか分かったとき、そして個人的にそれが自分の好きなものであると気付いたとき、この作品の価値は飛躍的に上昇し、首切りの理由も満足がゆくものとなった。読者を選ぶ作品だろう。(2000年12月・新潮ミステリー倶楽部)