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秘密屋文庫 知ってる怪

秘密屋文庫 知ってる怪 (講談社文庫)

秘密屋文庫 知ってる怪 (講談社文庫)

 本書は講談社ノベルスより刊行されていた『秘密屋 赤』を九割に、『秘密屋 白』を五割以下に改稿し、書き下ろしの『秘密屋 黒』を加えた短編連作である。自分は『赤』より『白』の方が好きだったので、『赤』が一割しか削られていないのに対し、『白』が五割も削られたのは納得が行かなかったが、予想外に『黒』が面白く、またこれは『白』の続きと言っても差し支えのない展開だったので、構成には納得した。
「文庫1『秘密屋 赤』――都市の伝説」巻末に参考文献として都市伝説や噂に関する本が列記されているが、そこに書かれてあった話をそのまま転記したような内容。はっきり言って胡散臭い逸話が延々と続くだけなので面白くない。嘘くさいが嘘かどうか、今ひとつ判然としない噂話が好きな人には面白いのかも。
「文庫2『秘密屋 白』――仕事師の伝説」『赤』では秘密屋について調べていた主人公の元に間違い電話が掛かってくる場面から始まる。電話の向こうにいる相手は、主人公のことを秘密屋だと勘違いしており、主人公は電話の向こうの相手と口で戦うことになるという内容。清涼院流水の著作に、この手の頭脳バトルは頻繁に登場するのだが、自分はわりと好きでノベルス版と同じく楽しく読めた。
「文庫3『秘密屋 黒』――摩訶愛しの伝説」『赤』『白』と続いてきた物語の完結編となる『黒』。清涼院流水なのにトンデモな結末ではなく、極めて真剣に締められており、またちょっとした叙述トリックも仕込まれていて、何て言うか、一言で言って感心してしまった。清涼院流水の入門としてはお勧めできないが、ある程度、清涼院流水を読んで面白いものと面白くないものが判別できるようになれば、本書を面白いと思えるかもしれない。