
- 作者: 酒見賢一
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1994/06/29
- メディア: 文庫
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著者は『後宮小説』で第一回日本ファンタジーノベル大賞を受賞した酒見賢一。これを生涯で読んだ最高の小説として挙げる人も少なくなく、実力は充分だろう。本書はその酒見賢一が中国の戦国時代を描いたものである。主人公は非攻の哲学と呼ばれる墨子教団の俊英、革離。防衛のプロフェッショナルで、戦争を作業的に捉える彼は、極めて論理的に人心を得、極めて効率的に城を堅強なものへとしていく。二万の敵勢が攻め入る中、革離はいかに数千の手勢で城を守りきるのか――。主題となるのは、言うまでもなく勝負の行方だろう。最終的に勝利するのは革離と数千の兵(女子供を含む)なのか、それともやはり城抜きの名人が率いる趙の二万の軍勢なのか。最初から背水の陣を引いて戦う革離の決意や苦しみも興味深いどころだ。また墨子の兼愛や非攻という概念も面白く解説されており、それらに対して革離が少なからず疑いを抱いている点も面白い。
とにかく本書は小説として素晴らしい。薄いし安いし、オススメの一冊である。