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アニメ『ef - a tale of memories.』の長文感想と考察(ネタバレあり)

『ef - a tale of memories.』を観ました。
 全12話。1話が約30分なので、全部で6時間くらいでしょうか。けっこう、あっという間でした。
 なんだか、ふしぎな作品でしたね。
 放送されてから、それなりに時間も経っていることですし。と言い訳しつつ、ネタバレ満載で参ります。

ef - a tale of memories. 1 [Blu-ray]

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  • 発売日: 2009/05/29
  • メディア: Blu-ray
 広野紘、宮村みやこ、新藤景の三角関係を描いた物語と、麻生蓮治と新藤千尋を描いた物語。2つの物語の間に関連性は、ほぼなく、片方を集中的にやっつけてから、もう片方に行っても良かったのではないかなと感じました。でも、終盤において、両者のクライマックスが、同時に来るのも圧巻なので、これは、これで良かったなとも思います。
 それよりも、リアリティの欠落を感じました。展開が突飛で、現実感が希薄であると言うより、むしろ物語の本筋でないところは、敢えて省いているような。
 たとえば、舞台に関してです。なんらかの震災を経て、復興したという事実は与えられています。ただ、どういった震災であったか、震災からどれくらいの時間が経ったのか、未だ郊外において廃墟が残されているのは何故なのか。なんか、こんな風に描写されると、実は、この物語は、2013年の現在よりも、ずっとずっと未来の話で、彼らは懐古主義で以って、敢えて21世紀風の生活をしているんじゃないかしら? もしくは舞台は日本ではなく、日本はすでに海に沈んでいて、ここは外国で単に日本人が多いだけの地域だったり(そう言えば雨宮優子の衣装はロシア風ですね)、もっと言えば、この音羽、という都市以外は、既に滅んでいて、宮村みやこが向かおうとした「外の世界」は存在しないのではないのか、とか邪推したりしてしまいます。
 雨宮優子の存在に関しても、同様に謎に包まれています。突如として学校の屋上に現れたり、廃墟の一角に現れたり、その神出鬼没ぶりは、とうてい人間とは思えません。映像的に翼の描写もあるので「天使なのかな?」と思いつつも、作中の人物は、いきなり現れた雨宮優子に驚くことなく、その問い掛けに平然と答えていたりしますし腑に落ちません。音羽の住人にとって、優子の突然性は、いたって日常的な現象なのかどうか……。
 家庭環境も謎が多いですね。麻生蓮治の母親以外の「親」と呼べる存在は、ほとんど登場しませんし、新藤景と新藤千尋が別居している理由も明かされません(あれ、もしかして、2人は、けっこう遠いところに暮らしてる??)。何処からお金が出て、どんな風に生活しているのか、まったく説明がない一方、広野紘だけはワンルームに住んでいて印税で、かろうじて生活している様子が描かれていてアンバランスです。
 とは言え。
 舞台となる時空間が、いつ、どこであろうが。雨宮優子が虚構の存在であろうが、それとも単に自問自答を促す装置であろうが。金の問題に対して説明があろうがなかろうが──この『ef』という作品の本質は、まったく揺るがないだろうなと感じます。
 と言うより。
 むしろ、そういった瑣末な設定や、丁寧な説明は、この作品が追求しているテーマを阻害しかねないなあ、と感じました。
 たとえば、麻生蓮治と新藤千尋が親しくなる場面。「45秒未満の邂逅」もそうですが、少ない時間で、何度も2人を出会わせています。麻生蓮治の学校や自宅でのシーンだとか、新藤千尋の自室でのシーンだとか、そういった、本来は、物語としてあった方が自然な流れになるであろうシーンを、ばっさり省いて、2人の時間だけにフォーカスしまくって、もう、それしか描かない勢いで突っ走り、しかし、そうして突っ走ったが故に、第2話にして新藤千尋は秘密を告白しようという想いに至るわけです(作中では作中の時間が、ちゃんとしっかり流れているので)。もちろん視聴者としては「えっ、もうそんな告白しちゃうの!?」と驚きますが、作中では、けっこう時間が流れていることが知っていますし、新藤千尋が悩んでいる場面もしっかり描かれていますし、また、そういう告白がなされることで、ふたりの仲は視聴者が想像していた以上に進展していたことが逆説的に証明されるというのもあります。
 平たく言うと、取捨選択が大胆なんですよね。
 広野紘と宮村みやこの出会いも同様ですよね。宮村みやこのエキセントリックな面にフォーカスして、彼女が、ふつうのかわいい女子であることがアピールされるであろうカラオケやファミレスのシーンは、ものの見事にふっ飛ばされ、そういう時間が存在していたことは広野紘の台詞の中にしかありません。
 映像の美もありますよね。雄大な空をバックに新藤千尋が自らの秘密を打ち明けるところや、宮村みやこが留守電にメッセージを残し続けるところ、後は雨宮優子の髪がばさぁっなったり、意味なく教会の屋上とか語り合ったりするような、いかにもシャフトらしい、過剰な演出も、この作品の、ドラマティックなところを切り貼りした作品には、よくマッチしているように感じました。
 なんて言うか、感動させられてしまうんですよ。
 宮村みやこが辺鄙なテレフォンボックスから、広野紘に電話を掛けるところなんて、最初は、冗長だと思いましたよ。宮村みやこの、ウジウジとした感情を、このカウントダウンが0になるまで聞き続けないといけないのかと辟易しました。だって、どう考えても新藤景の方が素敵じゃないですか。努力家だし。でも、30を過ぎたくらいから、なんか、煽られるんですよね。「やべえ、時間がない、広野紘、急げ! この壊れて、もう二度と元通りにならないであろう宮村みやこの心を、なんとかして、今! 繋ぎ止めるんだ! 広野紘!!」とかね。そうして、カードの残数が0になって、広野紘の言葉が途切れ、なにもかもが終わったかと思いきやの、そこから、世界に色が満ち溢れていくような劇的展開……! でも冷静になって振り返ると、あの瞬間の「宮村みやこが好きだ!」という感情は、どうも作られたと言うか、作らされてしまったと言うか、別に求めていないのに与えられてしまったと言うか、なんだか、変な感じです。だって、そもそも新藤景の方が好きでしたし、広野紘は好きじゃなかったし、と言うか、新藤景と堤京介の方を応援していたきらいがあるし、もっと言うと、こっちの物語より麻生蓮治と新藤千尋の物語の方が、ずっと好みで、むしろこちらのパートは余分に感じていたりもしたのですが……。
 おかしなものです。
 まあ、こういったモヤモヤと言うか「ふしぎだなあ」という感情も含めて。
 今回このエントリのタイトルにつけた「EmotionalなFairytale」という言い回しは、なかなか言い得て妙なのではないかと自画自賛してみたりします。
 総じて面白かったです。
 人生に銘記すべき傑作かと問われると今のところ難しいですが、2013年に触れた作品の中では、振り返るべき10作の内の1つに入るかなあと思います。この作品を勧めてくれた、すべてのひとに感謝します。
 今後に関して。原作の『ef - a fairy tale of the two.』や、その後日談『天使の日曜日-ef Pleasurable Box-』に触れたら、また違う印象を抱くのかもしれませんが、まずは『ef - a tale of melodies.』を観たいと思います。では。
ef - a tale of memories. DVD_SET 1

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  • 発売日: 2012/11/21
  • メディア: DVD

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