雲上四季〜謎ときどきボドゲ〜

本と涙と謎解きと、愛しさと切なさとボードゲームと

木梨憲武と佐藤健が主演の映画『いぬやしき』の感想(ネタバレあり)

 エッセンに行ったとき、飛行機のなかで『いぬやしき』を見ました。
 奥浩哉による同名の漫画の映画版で、主演は木梨憲武と佐藤健。ネタバレはありですので、未視聴の方はご注意ください。

見ようと思ったきっかけ

 飛行機の機内で観る映画って、微妙に悩んだりしませんか?
 隣のひとと距離が圧倒的に近いので、こちらがなにを見ているのかバレバレであるため、あんまり変な映画は観ることに抵抗を覚えます。
 また、涙もろい方なので、へたに感動物を見始めたりしたら、ぼろぼろ泣いてしまって隣のひとはもちろん、客室乗務員の方からも奇異な視線を受けることは必定。
 同様の悩みを持っている方は多いことでしょう。
 とまあ、そんな前置きはさておき、エミレーツ航空の機内映画で日本語字幕のある映画はなかったので、全編日本語で展開してくれて、感動物ではなさそうな『いぬやしき』を観ることにしました。

原作について

 奥浩哉による原作『いぬやしき』は1巻だけ読んでいます。Amazon Kindleで無料だったからなのですが、同じく無料だった2巻を手にとることはしませんでした。

いぬやしき(1) (イブニングコミックス)

いぬやしき(1) (イブニングコミックス)

 ちょっとですねー。
 悪趣味だったんですよねー。
 考えてみれば、奥浩哉という作家は、元々そうでした。
 最初に読んだ『GANTZ』は、ヒロインの扇情的なイラストに、ついつい惹かれてしまい手に取りましたが、その理不尽とも言える展開に嫌気が差し、途中で脱落してしまいました。
 ふと、気づいたのですが、最近、悪趣味そうな漫画の広告が多いじゃないですか。不用意にひとが死んだり、不用意にエロがあったり。こういう作品に限って、めちゃくちゃ引きが強かったりするので、うっかり1話でも読もうものなら、ついつい追ってしまうのですが、もしかしたら、この手の作品の始まりは『GANTZ』かもしれませんね。
GANTZ コミック 全37巻完結セット (ヤングジャンプコミックス)

GANTZ コミック 全37巻完結セット (ヤングジャンプコミックス)

いぬやしきのあらすじ

 閑話休題、そろそろ映画『いぬやしき』の話をしましょう。

定年を間近に控える冴えないサラリーマン・犬屋敷壱郎(木梨憲武)は会社や家庭から疎外された日々を送っていたが、ある日突然、医者から末期ガンによる余命宣告を受け、深い虚無感に襲われる。その晩、突如墜落事故に巻き込まれ機械の体に生まれ変わった彼は、人間を遥かに超越する力を手に入れることに。一方、同じ事故に遭遇した高校生・獅子神皓(佐藤健)は、手に入れた力を己の思うがままに行使し始めていた。自分の意志に背く人々をただただ傷つけていく獅子神と、獅子神によって傷付けられた人々を救い続ける犬屋敷。

http://inuyashiki-movie.com/

 現代の新宿を舞台に、冴えないジジイとイケメン高校生が、それぞれの信念……というほどでもない何かを掛けてバトルする。さっくり、まとめるとそんな感じです。

虚無感の飼い慣らし方

 原作同様に、冒頭部分に関しては、正直、見ていてしんどくて、何度、観るの止めようと思ったことか分かりません。しかし、観るのを止めたとしても時間は持て余していますし、また、どの映画を観ようかという悩みにふけるのも仕方がないので、流されるがままに観続けました。


 物語の中盤、主要登場人物のふたりが機械の体を手に入れ、犬屋敷が「奇跡の人」として、不治の病に罹った患者を癒やしまくるかたわら、獅子神が殺人に手を染め、転落し始めてからは、逆に観るのを止めることはできなくなっていました。
 獅子神が気楽に人を殺していくのを見て、多少、不愉快に思うところはありましたが、なんとなく許してしまう、なんとなく看過してしまうのは、佐藤健の人並み外れたイケメンさに由来するのではないか。


 やっぱり、イケメンはなにを許される


 殺人もときには悪くない、ただしイケメンに限る


 というようなことをずっと考えていましたが、ここまで書いて「あ、違うな」と気が付きました
 キーワードは、きっと虚無感だったんですね。
 犬屋敷も獅子神も、ふたりとも虚無感に囚われていて、機械の体という自らの虚無を解放する手段を得たときに、片方は人間を救うことで他人に肯定される自分を取り戻し、片方は自分を否定する人間を殺すことで、自分の居場所を見つけだそうとする
 そういう理念のぶつかりあい、戦いだったのかもしれませんね
 まあ、このように好意的に解釈できるのは、結局、佐藤健がイケメンだからかもしれませんが……。

終わりに

 飛行機の中という空間でなければ、きっと観なかったように思うので、そういう意味では得難い経験でした。
 けして悪い映画ではなかったので、オススメではあります。