雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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もし日本に吸血鬼租界があったらというif世界

 環望による漫画『ダンス イン ザ ヴァンパイアバンド』を読みました。
 吸血鬼が存在する現代日本を舞台に、ヴァンパイアのお姫様と人狼の従者が、がんばるお話です。

愛蔵版 ダンス イン ザ ヴァンパイアバンド1 (コロナ・コミックス)

愛蔵版 ダンス イン ザ ヴァンパイアバンド1 (コロナ・コミックス)

バンドは楽団ではなく、租界

 タイトルを見たときは、ミュージシャンなヴァンパイアが、ジャズを演奏して生計を立てながら、闇社会の仕事に従事する、ちょっと『血界戦線』みたいな物語を想像していたのですが……、
 ええ、ぜんぜん違いました。
 バンドはBandではなくBund。つまり、かつて上海に存在した租界地区みたいなもので、ヴァンパイアバンドというのは東京湾に浮かぶ吸血鬼が住まう人工都市です。
 ヴァンパイアの女王ミナ・ツェペッシュが、日本政府とあれやこれやして築き上げた、吸血鬼たち安息の地で巻き起こる様々な騒動を描いた作品でした。
 ちなみに『血界戦線』は『血界戦線』で、めちゃめちゃ面白いです。

血界戦線―魔封街結社― 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

血界戦線―魔封街結社― 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

現代ファンタジィな吸血鬼ロマン

 吸血鬼を題材とした作品って、けっこう多く、描こうと思えば分布図や派生図を描けるのではと思っています。
 ブラム・ストーカーによる恐怖小説『吸血鬼ドラキュラ』に始まった吸血鬼物ですが、そのゴシックでホラーな要素を引き継いでいるものもあれば、ファッションとしての吸血だったり、ミステリアスだったり頽廃的だったりするものを引き付いているものもあり、枚挙にいとまがありません。
 個人的に好きな吸血鬼物の筆頭は、なんといっても萩尾望都の『ポーの一族』これは至上です。
 ファッション要素が強いかなとは思いますが、単純に展開が面白すぎる『ヴァンパイア十字界』も大好きで、今回、読んだ『ダンス イン ザ ヴァンパイアバンド』は、比較的この作品近いかなと感じました。

ヴァンパイア十字界 1巻 (デジタル版ガンガンコミックス)

ヴァンパイア十字界 1巻 (デジタル版ガンガンコミックス)

青春物から一転する後半の展開が好き

 正直、前半は退屈でした。
 ザコモンスターが現れて、それをミナが真祖の血を継ぐヴァンパイアとしてぶっとばしたり、人狼のアキラが変身してぶっとばしたりする一話完結型の展開は、よくあるものです。
 ふたりの関係性を描くためでしょうが、すれ違いなども、青春物あるあるという感じでした。
 でも、読み続けたのは──愛蔵版を読んだのですが──、断章的に挿入される過去編に、なにか引っかかるところがあったからです。ミナの母、先代ツェペッシュ家公主ルクレツィアが犯した全ヴァンパイアに対する裏切りとは何か? 400年前の三支族による反乱はどうして起こった、現在のヴァンパイアの勢力はどうなっているのか、ミナはどうしてバンドを作ったのか? 過去と現在の間に横たわる謎が、もし魅力的な形で解決されるのならば……その想いだけで読み進めました。
 この努力が報われたのは、愛蔵版5巻の中盤。
 ここまで長かったと思うと同時に「ついに始まった!」と喝采でした。
 ネタバレになってしまうので、あんまり書けませんが、もうずっと面白いの連続で、一気に好きになりましたし、止め時を見つけられなくなり、最後までそのままの勢いで読んでしまいました。

そして第二部へ、

『ダンス イン ザ ヴァンパイアバンド』自体は全14巻(愛蔵版は7巻)で完結していますが、外伝の『スカーレット オーダー スレッジハマーの追憶』を経て、第二部の『スカーレット オーダー ダンス イン ザ ヴァンパイアバンド2』へ続いています。
 が、残念ながら『スカーレット オーダー』は打ち切りエンドだったみたいで、最終巻となる4巻終盤は駆け足になってしまっているみたいです。
 第一部を読んだ感じとしては、だいぶスロースターターであることに加え、叙事詩と言わんばかりの大きさを持っているので、なんとかして再始動が掛かることを祈るばかりです。

愛蔵版 ダンス イン ザ ヴァンパイアバンド スレッジ・ハマーの追憶 上 (コロナ・コミックス)

愛蔵版 ダンス イン ザ ヴァンパイアバンド スレッジ・ハマーの追憶 上 (コロナ・コミックス)

終わりに

 と言うわけで、まだ外伝も第二部も着手していませんが、第三部が始まることを祈っての応援記事でした。吸血鬼物が好きなひとも、異種族間の関係性が好きなひとも、みんなみんなオススメです!