雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

オススメの謎解き&ボードゲーム&マーダーミステリーを紹介しています

死後に評価された男の人生『イミテーション・ゲーム』の感想(ネタバレあり)

 映画『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』を観ました。
 非常に感動的で、グッと来たので少し思ったことを書くことにします。

実話の強み

 映画の冒頭に、このような一節があります。

BASED ON A TRUE STORY(事実に基づく物語)

 世の中には、フィクション小説を読まないというひとが、一定数います。
 彼らは非現実には価値がないと判じ、事実のみに価値を見出しますが、あまり共感できません。
 シンプルに創作物語が好きで、そのちからを信じているというのもありますが……もう少し言葉を加えるならば、物語は感情を励起する装置であると考えています。
 感動的な結末だけを提示されても人間は感動できませんが、起承転結の形にすると人間は感動できます。そして、その感動によって、人間は成長できますし、他者と意識を通わせることができます
 創作なのか実話なのかは関係なく、物語として素晴らしければ、それは素晴らしいもの、というのが秋山の基本姿勢です。
 ではあるのですが、冒頭に配された、このメッセージは観ている最中、暗示のようにつきまとい、余計にリアリティを覚え、余計に感動させられた気がするので、ずるいものですね、実話というのは。


努力には正当な評価が与えられるべき

 縁の下の力持ち。
 という存在を、かっこいいと思いますが、自分が、そうなりとはあんまり思いません。生きているうちに、そのひとが認識できるうちに、その努力は正当に評価され、然るべき報酬が与えられるべきと考えています
 だから、画家フィンセント・ファン・ゴッホの逸話も目にするたびに、懊悩を覚えます。
『イミテーション・ゲーム』で描かれたアラン・チューリングも、第二次世界大戦を早期に終了させ、多くの人々の命を救ったという点で、実に素晴らしいと思いますが、晩年の彼が同性愛者として糾弾され、孤独のなかで自死を選んだのは、ほんとうに……ほんとうに辛いですね。

天才の物語

 映画自体は、エンターテイメントとして、非常によく出来ていると感じました
 チューリングの天才性は、ときに滑稽に、ときに鋭利に描かれており、森博嗣の描く天才が特に好きな秋山としては「こういうの大好き……!」という気持ちで、終始、ワクワクしながら観ました。
 愛すべきコミュニケーション力の低さや、ついに理解を得て仲間と想いを共にするシーンも、良かったですね。それだけに、晩年の孤独がしんどいわけですが……。


終わりに

 人生で出会った映画のなかでも、トップクラスに好きな映画です。
 タイミングを狙って、また観たいです。