福地翼の漫画『サイケまたしても』を全巻一気読みしました。
傑作……ではないでしょうか?
何度、泣いたことか、まったく覚えていません。感動が少し落ち着いたので、どこが良かったか振り返ってみます。
- 作者:福地翼
- 発売日: 2015/02/16
- メディア: Kindle版
あらゆる時間物が好き
このブログでは、死ぬほど繰り返していますが、ありとあらゆる時間物が好きです。
特に、好きなのはループ物ですね。
この『サイケまたしても』は、主人公・葛代斎下が、些細なきっかけからタイムリープの能力を獲得し、その力を駆使して活躍していくので、まさに好みのど真ん中どストライクという感じです。
後ろ向きで臆病で弱気な主人公が良い
なにはともあれ、主人公の性格でしょう。
物語が始まった当初、主人公は後ろ向きで、臆病で、弱気で、軸がブレブレ、歪みにこじらせ、端的にクズと言えます。そんな主人公が、ヒロインの交通事故に直面し、モグラ池で溺死すると、その日の午前7時に戻るという能力に目覚めてからの展開は、ループ物の王道とも言えるもので喝采でした。
ヒロインを救うという過程において、かつて憧れたヒーローになるという夢を掴み、それを実践していく様子は、ほんとうに感動的で、良き……でした(唐突な語彙力失踪)。
速攻で能力者バトルにシフト
少年漫画誌での連載だったからでしょうか。
ヒロインを救うや否や、発泡スチロール化の能力を持つ氷頭栄治とのバトルに続き、さらには、能力者の能力を消去することを目的とした能力者集団ネガティブレインとの対決に入っていくのは、正直、笑いました。
こういうのが読みたいわけじゃなかったんだけどなあ……
そう思いつつも、敵を倒すためにループを繰り返すサイケの、狂気的とも言える姿勢に、ふしぎな魅力を覚えて読み進めました。
そして、そうするうちに、氷頭栄治、アナ・エガートンとひとりずつ仲間が増え、サイケのヒーロー活動が広がっていくのにワクワクしました。
主人公が弱いところに好感が持てる
良かったところのひとつに、サイケが弱かったことが挙げられるでしょう。
溺死すれば、その日の朝7時に戻ることができるという超強力な能力ではありますが、いわゆるバトルにおいては、まったくの無力と言えます。大半の敵には、最初の一発目でコテンパンにやられて、命からがら脱出して、池に飛び込み、次のループで頑張るというのがサイケの基本戦略です。
めちゃくちゃ後ろ向きなんですけれど、めちゃくちゃ前向きでもありますよね。
自分が弱いことを知り尽くしていて、その上で、このループ能力を最大限に活かそうという姿勢が、とても弱いです。ひとりの敵を倒すのに、場合によっては100回もループするのは、正直、狂気を感じますけどね……!
次から次へと強敵が
黒田ユメヲ率いるネガティブレインとの対決が終わったと思いきや、全人類を能力者にすることを目指すヨハン・ディートリッヒとの対決が始まり、それが終わったら相手を洗脳することができるウィル・クルーニーとの対決が始まり、それが終わったら次は世界……と、次から次へと、それまでのボスを上回る強敵が現れるのは、ほんとうにずるいですね。
読む手を休める暇がありません!
最後まで駆け抜けて
氷頭栄治が好きです。
すべてに対して無関心だった彼が、サイケに出会うことによって友情に芽生え、サイケと共に生きていこうとする。そして、まだ敵であるカリム・クリスタンヴァルを救うために、両目の失明すらも厭わない。
あまりに潔すぎます……!
もちろん、彼の生き方、価値観を、そのように変容させたサイケの狂気、覚悟にも!
強い羨望を抱きます。良すぎる……(そして、唐突な語彙力失踪)。
後日談
いつまでも続いて欲しいと思いつつ、オラクルホルダーの行く末を見極めて、自らの能力を手放したサイケの決断も、勇気がいったことでしょう。
終盤の展開は『シャーロット』っぽいかなとも思いましたが、彼らの物語を終わらせるには、これ以外の結末はなかったでしょう。ふと思いついたので書きましたけれど『シャーロット』も良かったです、また見返したい……。
終わりに
と言うわけで『サイケまたしても』の感想でした。
読めて良かったです。こういう作品は大・大・大好物なので、オススメがあったら是非お教えください。