塩田武士の小説『罪の声』の映画版を見ました。
ネタバレありの記事ですので、未読の方、これから見る予定の方はお気をつけください。
原作について
原作『罪の声』は2016年に講談社刊。
山田風太郎賞に輝き、文春ミス1位、本屋大賞3位にランクイン。2016年を代表するミステリー/エンターテイメント作品の1作として数えられることでしょう。
私は未読ですが、映画を見て骨太の作品であろうなと感じました。
- 作者:塩田武士
- 発売日: 2019/05/15
- メディア: Kindle版
あらすじ
「これは、自分の声だ」
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000320418
京都でテーラーを営む曽根俊也。自宅で見つけた古いカセットテープを再生すると、幼いころの自分の声が。それはかつて、日本を震撼させた脅迫事件に使われた男児の声と、まったく同じものだった。一方、大日新聞の記者、阿久津英士も、この未解決事件を追い始め--。
昭和の未解決事件である1984年から1985年にかけて発生したグリコ・森永事件をモチーフとした作品です。
自分の声が事件に使われたことを知ったテーラーと、平成の終わりに昭和の事件を追う新聞記者のダブル主人公で進みます。
感想
極めて面白かったですね。
かなり好みのデザインでした。
過去の事件を調査するという観点において、この作品では聞き込みが重視されており、ふたりの主人公の、ふたりとも事件に関係する関係者を探しだしては、事件に対して聞き込みを行うという形式で進みます。
各証言者は、画面に実際に「証言者 田中太郎」といった形で登場し、主人公の質問に対して答えていきます。
この一連の流れがゲーム的と言うか、影も形もなかった真相が、断片的に、あるいは朧気に分かっていくのが快感でした。
私の知っている範疇ですと『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』が近いかもしれません。
『ナイブズ・アウト』は事件関係者それぞれに話を聞き、お互いがお互いに対して思い合っていることのギャップが面白かったですが、『罪の声』の場合は事件に対して語られているので、より一方通行的と言えるかもしれません。
映画が始まった直後は、まったくの未知数だったものが、証言を積み重ねることで、じょじょにはっきりしていくという感覚が似ています。
納得感が得られた、というのも良かったという感想につながっています。
感動的な勢いで押し切られたというより、いくつもの証言者たちの証言を積み重ねることで動かしがたい事実が浮き彫りとなり、犯行動機や不自然な箇所の理由、隠されていた人々の想いが描かれていて、すべての伏線が回収される喜びがありました。
一緒に見たぺこらさんとのラジオ
終わりに
最後に映画館に行ったのは2月末に『仮面ライダージオウ NEXT TIME ゲイツ、マジェスティ』を見たときだったので、おおよそ9ヶ月ぶり。たまには映画館も良いものですね。