雲上四季

本と涙と謎解きと、愛しさと切なさとボードゲームと

エロゲーが未入手で、ライトノベルが入手済みのもの

 どうもライトノベルやノベルゲーム(ビジュアルノベル)という分野はレビューこそ受け入れるけれども、評論は歓迎されない、という印象がある。

http://d.hatena.ne.jp/inhero/20071207

 引用先ではライトノベル論壇が、一応は存在するけれど、ライトノベルの主な読者層は中高生であり、彼らは解釈・評論を嫌うのではないか、と結んでいます*1
 また、実例として巻末に解説がつかないことを挙げています。言われてみれば、富士見ファンタジア文庫および富士見ミステリー文庫の新人賞受賞作を除き、ライトノベルにはめったに解説がつくことがありません。中高生が解釈を嫌うというのも、充分に納得できます。まあ、小難しいことを考えるのが好きな読者は例外的に評論を受け入れているかもしれませんが、それでも大半はそういった評価を気にせずに読んでいるでしょう。
 では、だからと言って、ライトノベル評論が非中高生およびクリエイタ側にしか受け入れられていないと言うと、そうでもないように思います。
 と言いますのも、それはライトノベルに限ったことではないからです。文学にせよ、ミステリにせよ、ライトノベルにせよ、読者の大半に評論が受け入れられているとは思えません。ほとんどの読者は、熱心な本読みではなく、書店に足を伸ばし、気に入った作家の気に入った本を買っているに過ぎないでしょう。評論を求めているのは、特定の作家、もしくは特定のジャンルのファンだけだと思われます。また、考えてみればライトノベル以外の小説にだって解説がつくのは、ほぼ文庫に限定されます。となれば、解説という文化は、文庫独自のものと捉えた方が自然だと考えられます。
 であれば、どのジャンルにおいても評論家は「幽霊」なのか?「実際的読者にはあまり意味はなく、メタな読者にとってしか意味をなさない」のか? いや、そうでもないだろうと思います……が、その件に関してはゆっくり考えたいので、またの機会にしたいと思います。その代わり、評論家の登場は、そういうレベルの問題ではなく、ただ単に評論家が存在するステージに移行した、ただそれだけのことではないかというのを思いつきました。
 このエントリでは、ライトノベル論壇はさておき、ライトノベル評論家に関して少し考えてみたいと思います。

そもそも、評論家が生まれるには、

 そのジャンルがある程度、成長し、評論家が活動できる土壌が求められると思います。
 引用先ではミステリというジャンルには評論家がいると述べていますが、言うまでもなく史上初のミステリとされる『モルグ街の殺人』が発表された当初、まだミステリ評論家はいませんでした。1841年にミステリが生まれ、日本に渡り、様々な変遷を経ていまのミステリ評論家が生まれたのです。
 様々な変遷の一例を挙げます。

1)ミステリが複数の作家によって書かれる。
2)だんだん複雑になってきて、系統化したくなる。
3)評論家がジャンルを系統立てて説明するために生まれる。

 こんな感じですかね。
 他にも商品価値の増大や時代の傾向など、評論家が生まれる条件は色々ありますが、やはりある程度の土壌がないと評論家は生まれ得ないと思います。

ライトノベルの場合・エロゲーの場合

 ミステリと異なり、ライトノベルの最初の一作が何であるかは議論の余地があります。『クラッシャージョウ』とすれば1970年代ですし、『銀河英雄伝説』や『ロードス島戦記』とすれば1980年代ですし、『スレイヤーズ!』『ブギーポップは笑わない』とすれば1990年代です。そして、2003年に『まんたんブロード』が創刊され、2004年に『ライトノベル完全読本』と『このライトノベルがすごい!2005』が出版され、2006年に『新世紀エンタメ白書』が出版されています。
 これを鑑みると、1970年代〜1990年代にライトノベルが生まれ、土壌が育まれ、2000年代に入って評論家が目立ってきたと考えることができます*2
 後、タイトルにもしてしまいましたし、引用先がライトノベルと共に「ノベルゲーム(ビジュアルノベル)」も挙げているので、これをエロゲーと読み替えて、こちらも考えてみたいと思います。
 Wikipediaを見る限り、エロゲーは1980年代に始まったようです。しかし、その後、一部の雑誌が独自に行っているものを除き、ランキングが実施された気配はありませんし、評論家が活躍できるような舞台が整った気配もありません。単に秋山の目に届いていないだけかもしれませんが、それでもジャンル外にまで波及していないという点において、エロゲーライトノベルほど評論家を獲得できていない、つまりライトノベルほどジャンルとして成熟していないなと感じます。とは言え、エロゲーは年齢制限という性質から、敢えて第三者の視点を交えずに、メーカとユーザの関係だけに留めたのかもしれませんね。

おまけ

 思いつく限り、ライトノベル系評論家とエロゲー系評論家を挙げてみました。
 一部に関して、どちらに分類するかはひとによって異なるかもしれませんが、まあ、秋山の場合ということでよろしくお願いします。

ライトノベル系評論家 エロゲー系評論家
宇佐見尚也
宇野常寛
榎本秋
榎本海月
大森望
笠井翔
極楽トンボ
新城カズマ
鷹城宏
タニグチリウイチ
蔓葉信博
夏葉薫
細谷正充
前島賢
前田久
三村美衣
渡邉大輔
東浩紀
加野瀬未友
更科修一郎
涼元悠一
橋本勝也
元長柾木
渡辺僚一

*1:引用先では若者としていますが、若者の範囲はひとによって異なり、場合によっては20代若者でも若者とされることがあるので、本エントリでは中高生を言い換えさせていただきます

*2:追記、文章ミスに気がついたので表現を変えました。