雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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「嘘だ……」
 魔法使いは呟いた。
 伝説の剣を携え、伝説の鎧に身を包んだ勇者が、魔王の一撃を受けて倒れていた。その隣には身を呈して勇者を守ろうとした若き僧侶も倒れている、聖水を振り掛けた彼女に魔王は触れられないはずだった。魔王の背後に回り、勇者と挟み撃ちを掛けようとしていた戦士は、いつの間にか首を刎ねられている、忍術を極めた彼の動きは誰にも悟られないはずだったのに。魔法使いの斜め前で、勇者たちを援護しようとしていた狩人も、手にした弓矢ごと斬られている、絶対に折れることのない弓矢は最大の武器であり最大の防具でもあったはずなのに。
「嘘じゃないさ」
 ただひとり残った魔法使いを相手に、魔王は艶然と笑みを浮かべた。
竜王の加護を得て、伝説の武具を揃え、巫女の予言と聖王の紋章を手に入れれば、魔王が倒せると思ったのか。伝説や物語の中にあるように、準備さえ怠らなければ、魔王が倒せるとでも思ったのか? クックッ、甘すぎる。これが現実だ、これが真実だ。嘘じゃ、ないさ」
 魔法使いは倒れた。


『本当の歴史』445文字