アンチ・正統派ラ
ブコメディという言葉がここまで似合う言葉も珍しい。良くも悪くも最近の
ライトノベルの典型なのだけれど、主人公の燃えっぷりのベクトルが通常と180度異なる。《墓穴掘り人形》を自称する主人公は、ここぞという場面でことごとく墓穴を掘るのだが、その度に自に《墓穴掘り人形》という二つ名を与えることを思い出し、その名前を免罪符のように扱うのだ。非常に歪である。二番目のために三番目を犠牲にし、一番目のために二番目を犠牲にし、三番目のために一番目を犠牲にする。その異様な矛盾を、主人公は「墓穴を掘った」と弁明し、あるのかないのか分からない目標のために突っ走る。非常に歪である、そしてかなり駄目、人によっては読んでいて虫唾が走ることこの上ないだろう。読む前は
西尾維新と比較されることが多かったように感じたが、実際に読んでみて思ったのは、
鎌池和馬に近いな。出発点が
鎌池和馬に近いのだけれど、その向かう先がまるで違うというか、行ったり来たり戻ったり、実に歪。
文体に関して。空白を使って文字を中間に揃えたり、太字・傍点・四倍角の乱用が目立った。その回数があまりに多いため、
西尾維新や
うえお久光ほど、科白に与えようとしている効力が見られない。
それにしても《ブーメランばばあ》がかなり格好いい。ババア、ババアと作中では言われたい放題だし、九十六歳と高齢のはずなのに、ありえないぐらいの活躍っぷり。いやあ、格好よかったなあ。