雲上四季〜謎ときどきボドゲ〜

本と涙と謎解きと、愛しさと切なさとボードゲームと

再読するなんて無意味、時間の無駄でしかない

……と思っていたことが自分にもありました。


 西尾維新クビキリサイクルを再読しました。
 西尾維新はわりと好きな作家で、今のところ全作を追っています。先日、デビュー作の『クビキリサイクル』が文庫化され、隔月で戯言シリーズの文庫版が刊行されるというので、買い求めました。その、直接の理由は読書に割くことのできる時間が減ったからです。

・面白いかどうか不確定な新刊ではなく、以前に読んで面白いと感じた本。
・移動中でも読むことのできる文庫本か新書。

 うえの条件にあうものを探していたところ、目に付いたのが『クビキリサイクル』だったのです。
 が、買ってみたものの、やはり以前に読んだことのある本を、深い理由もなく再読するのは気が引けました。読書に割ける時間は有限で、この世には未だ自分が着手していない面白い小説家の、面白い作品に満ち溢れているからです。
 とは言え『クビシメロマンチスト』の文庫版刊行が近づくにつれ、焦りが生まれてきました。シリーズ1作目を買ったのだから、どうせなら2作目以降も買い揃えていきたい。けれど、読まない本を本棚に並べる趣味はない。
「仕方がない」
 そう呟きながら表紙を捲って驚愕しました。
 驚くべき読書体験に身を包まれたのです。
 ここらへんを語ると無駄に長くなるので、要点だけ並べます。以下、秋山が感じた『クビキリサイクル』再読の魅力です*1。ちなみに、感想

1)デビューから現在に至る西尾維新を知っている読者、という立ち位置から読むことができる。
2)後のシリーズで登場人物がいかなる運命を辿るのかを知っている状態で読むことができる。
3)作品を通じて読み手である自分自身の成長や変化を見つめることができる。
4)記憶の片隅に残っていた出所不明の情報を思い出すことができる。

 他にも細々とした発見がありましたが、要点だけを抜粋すると以上のようになります。
 ある種、新鮮な読書体験を経て、今まで自分が再読という読み方を舐めていたことを自覚しました。
 この世には、未着手の傑作がごろごろ転がっている。既に読んだ本を繰り返し、読むなど愚の骨頂……なんて頭の固い、そして未完成な思考でしょうか。今まで再読を忌避した結果、本を通して時間を見通すことのできる経験を、自ら手放していたのです。ああ、勿体ない。
 今後は積極的に再読していきたい所存です。
……とは言え、やっぱり、まだ読んでない傑作を探したくもあります。再読は、積読を崩しつつ、合い間を見計らって、という感じで。
 以下、余談。
(4)の「記憶の片隅に残っていた出所不明の情報を思い出すことができる」に関して。
 実は何年か前から「ある分野で活動を始めた先行会社に、同じ分野で追いかけようとする会社は絶対に追いつくことができない」という概念が秋山のなかにありました。けれど、何処で覚えた概念だったか、そしてこれが何と名付けられていたかは、生憎、忘れてしまっていたのです。
 その忘却が、咽喉に引っかかった魚の小骨のようで、その引っかかりをどうにかするために、人力検索はてなに投げたこともあります(question:1188996197)。
 が、その長年の*2疑問が、この度、ついに解消されたのです! なんと、いーちゃんが言っていたのです!

 収穫逓増。持つものはより多く持つ、という、持たざるものには何の救いにもならない経済学上の法則のことである。随分前に習った概念なのでよく憶えていないけれど、簡単に言えば《現実的な問題として一旦ついてしまった差を埋めることはまず不可能だ》という意味だ。お金であろうと才能であろうと、それは同じらしい。
(『クビキリサイクル』ページ42より)

 というわけで、秋山の咽喉に引っかかっていた小骨の名前は、収穫逓増の法則でした。
 まあ、だからなんだと言われてしまえば、それまでですが、再読の悦びを感じた一瞬でした。

クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い (講談社文庫)

クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い (講談社文庫)

*1:秋山の場合の、です。

*2:と言っても6年程度。