雲上四季〜謎ときどきボドゲ〜

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ウィザードリィのノベライズ『隣り合わせの灰と青春』読みました

 ダンジョンを探索するRPGの古典的名作『ウィザードリィ』の、ベニー松山によるノベライズ『隣り合わせの灰と青春』を読みました。
 RPGのノベライズという観点では、元祖に挙げられることも多い傑作で、今まで読んでいなかったことを悔やむレベルの作品でした。

隣り合わせの灰と青春 (幻想迷宮ノベル)

隣り合わせの灰と青春 (幻想迷宮ノベル)

概要

 JICC出版局より1988年に発売された小説です。
 その後、1998年に集英社より復刻されており、今回、秋山が読んだのは幻想迷宮書店が2016年に発行したKindle版です。
 非常に稀少な作品で、Amazonで古本を買おうとすると5000円くらいします
 気になっていた作品が、Kindleで手頃な価格で読めるというのは、ほんとうに素晴らしいことです

隣り合わせの灰と青春―小説ウィザードリィ

隣り合わせの灰と青春―小説ウィザードリィ

あらすじ

 Wikipediaにあったものを転載させていただきます。

戦に明け暮れる狂王トレボーが治める城塞都市。悪の魔術師ワードナはトレボーから絶対無敵の魔法障壁を作り出す「魔除け」を盗み出し、巨大な地下迷宮を築き、モンスターたちを召喚しそこに立てこもってしまった。トレボーは激怒し、軍隊を派遣するも、モンスターのうろつく狭いダンジョンでは軍隊が有効に機能せず、全滅。これに対し、トレボーの参謀・グレブナーグは、冒険者たちを募り、魔除けを奪還したものには多大な褒賞を与えるというお触れを出すことで、事態収拾を立案。これにより、トレボーの城塞には各地から戦士、盗賊、魔術師、僧侶など、様々な冒険者達が集うようになった。そして彼らは今日も迷宮へと向かっていく。


戦士スカルダも、そんな冒険者の一人であった。同じく戦士であるガディ、盗賊のジャバ、僧侶のベリアル、魔法使いのシルバー・サラの6人でパーティーを組み、魔除けを奪還すべく、迷宮の怪物達と戦い、さらに他のパーティーとの激しい競争を繰り広げていた。しかし、そんな最中、魔法使いのシルバーが戦闘で命を落とし、還らぬ人となってしまう。代わりに、全ての呪文をマスターした謎めいた魔法使い・バルカンを新たに仲間に加えるのだが、スカルダとは方向性の違いから対立してしまう。パーティの不和、他のパーティによる妨害工作、そして恐るべき迷宮の罠とモンスター達を切り抜けて、ついにワードナと対峙した彼らが知る真実とは……?

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E8%AA%AC%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%82%B6%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%AA%E3%82%A3_%E9%9A%A3%E3%82%8A%E5%90%88%E3%82%8F%E3%81%9B%E3%81%AE%E7%81%B0%E3%81%A8%E9%9D%92%E6%98%A5

『ウィザードリィ』シリーズの第1作『狂王の試練場』をテーマにした作品です。
 ちなみに原作は、ほぼ未プレイです。実際には、小学生の頃に、少しだけ遊んだのですが、当時はマッピングという概念も知らず、あまりの高難易度に放り投げてしまいました。

感想

 さすがに、古臭さはありました。
 古風なと言うか、レトロな雰囲気です。
 でも、読み進めることが困難に思えるほどということはまったくなく、むしろ高い完成度と、巧みなストーリーテリングに導かれ、一気に最後まで読み切ってしまいました。
 1巻完結型ということを考えると、正直、これ以上はない、なるほど傑作と謳われることも納得の作品でした


 ゲームのネタに対し、独自の解釈を加えて、リアリティのある世界観を構築しているのは素晴らしかったです。転職したらレベルが1に戻る、盗賊だったときは解体できていた罠が忍者に転職したらできなくなる、歴戦の猛者でもやられるときはやられる、ささやき、いのり、えいしょう、ねんじろ! に失敗したらロストしてしまい生き返ることはない。
 ゲーム内では「そういうシステムだから」だけで受け入れられていた諸々が、小説になるとそうではなくなるわけで、しかし、読者が不自然に思わないよう、逐一、論理的な説明が付与されており、スムーズでした。


 冒険者たちの死もしっかりと描かれており、迷宮が危険な空間であるということも、ひしひしと伝わってきました。
 果たして迷宮の最奥で待ち受けている真実とは、狂王トレボーとワードナの因縁とは、そして何よりも主人公たちの旅の行く末は……?


 読んでいる最中、なんとはなしに思い出していたのは高畑京一郎の『クリス・クロス 混沌の魔王』と、林亮介の『迷宮街クロニクル』。
 絶望的な状況下から、どういう展開を追うことになるのか、そして物語はどこに着地するのか。ドキドキしながらページを繰り、辿り着いたエンディング。この結末は、しかし、個人的には少し意外でした。ここに意外性を覚えるという点が、現代の本読みなのかもしれません。

終わりに

 ベニー松山による小説ウィザードリィシリーズの第2弾『風よ。龍に届いているか』にも着手していますが、こちらも最高に面白いですね。
 少し話はずれますが、古川日出男『アラビアの夜の種族』もいずれ読みたいです。