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新海誠による新たなセカイ系『天気の子』の感想(ネタバレあり)

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 7月19日に『秒速5センチメートル』や『君の名は。』で知られる新海誠による新作アニメ映画『天気の子』が公開されました。
 新海誠は『英雄伝説5 海の檻歌』で知り、『彼女と彼女の猫』からずっと追っている好きな監督です。今回の『天気の子』も楽しみに観てきました。ネタバレありで感想を書きます。

『君の名は。』ヒットに臆さない新海誠

『君の名は。』が大ヒットしたことで、これに類する作品を出してくるのではないかというのは、ちょっとした懸念でした。
 しかし、結論から言うと、新海誠はやっぱり新海誠。あいかわらずこじらせた恋愛観を持っているし、すぐに世界とか言い出してしまう、我々の味方でありました

新しいタイプのセカイ系

 セカイ系としてありそうでなかったと言うか、これが最新の時勢なのか……という印象でした
 ざっくり言うと、初期のセカイ系は、少女を取るか世界を取るかという選択肢が突きつけられたとき、そもそも選べないか、プレッシャに負けて世界を取ってしまうか、少女を選ぶのだけれど、少女の方が少年を拒絶して、自ら世界を取りに行ってしまうかだったと思います。
 中期のセカイ系においては、ちょうど草食系男子という言葉が出てきた頃だと思いますが、どちらかと言うと少女の方が前向きで、臆病な少年の手を引っ張って世界も救うし、自分たちも救うみたいな感じに進んでいったような気がします。
 誰もが笑顔になるハッピーエンド。それはそれで素晴らしいものですが、個人的には、がつんと少女を取って、世界を見捨てるエンディングはないものか考えていたのです。いえ、そういうアプローチの作品は、いくつかありましたが完成度の観点から今ひとつで、パラダイムシフトを巻き起こすほどではなかったかな、と。そもそもセカイ系という考え方が、陳腐化してしまい、マーケット的に縮小していたと言えるかもしれません。
 ぼんやり思っていたのは『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』です。覚醒した碇シンジが、世界を完全に見捨て、綾波レイをこれ以上はないというくらいに救うという結末だと良いなと思っていました。

森嶋帆高の選択

 と言うわけで、世界がどんなに狂ってもいい。もう、二度と晴れが見られなくなってもいい。天野陽菜がいれば! 天野陽菜だけがいればいい……! という主張は、わりと待ち望んでいたものでした。
 そう、これが観たかったんだ!
 と、内心喝采でした。

相変わらず美しい映像

 上述の通り、ストーリーとしては、諸手を挙げて歓迎、というスタンスです。
 映像に関しても、おそろしく資金を投入したのでしょう、日本の梅雨時期の美しさが、過剰なまでに演出されているように感じました。
 光をキラッキラに使って、リアリティを無理やり作り出すのは新海誠の得意とするところですよねえ。


 演出という観点において、穂高と陽菜の2人が果てしない空を無限に落ちながら、お互いに手を伸ばすシーンは、細田守監督による『未来のミライ』へのアンサーかなと感じました
『未来のミライ』を観たときも、実は思ったんですよね。鮮やかな空を落ちながら、手をつなぐのって良いなあ……でも、もっと上手くできるんじゃないか? って。
 新海誠、やってくれましたね。
「落ちながら手を繋ぐってのは、こういうことだよぉ!」という主張を感じました。


 また、陽菜が晴れ女として仕事をしていたとき、ヘリポートから見た花火のシーンは、新房昭之総監督による『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』へのアンサーでしょうか
 現代日本を代表するアニメーターたちと競い合うような姿勢は、ちょっとドキドキしますね。

君の名は。キャラ登場という隠し要素

 前作『君の名は。』の主要登場人物である立花瀧が登場したときは「え、まさか?」と思い、神木隆之介の声が聞こえた瞬間に「あー、やっぱりー!」と手を叩きそうになりました。
 さらに、その後は宮水三葉も、端役でしたが登場してくれて嬉しくなりました。
 ただ、勅使河原克彦と名取早耶香、宮水四葉には気づけませんでした。エンドロールにはいたので、こっそり登場していたと思うのですが。
 後はSoftBankのCMに出てくるお父さんこと白い犬。2シーン出てくるとのことでしたが、どちらも見つけられませんでした。それに、カップヌードルの「2分」とか。こういう小ネタを隠し要素的に入れているのは、面白いなと感じました

RADWIMPS感の減衰

 前作『君の名は。』における「前前前世」と比較すると、今回のRADWIMPSは、わりと穏やかなだったという印象です。
 バラード系だからでしょうか。あんまり耳に残らないというか……。

一緒に観たぺこらさんの感想

だいぶ面白かったよ!『君の名は。』より好きかもしれない。『君の名は。』も良かったけどね。より音楽の使い方が上手くなっていたし、映像もきれいになっていたと思う。ま、映像はいつも綺麗だけどね

確かに全体的にクォリティは上がっていたね。お金を掛けていると感じた。スタッフロールでも、中国人の方の名前を多く見かけたし、絵を描くひとの人数が増えているのかもね

予告を見たときは、ファンタジー世界なのかなあと思っていたけれど、意外に現実感があったね。テーマもわかりやすかったし

警察のひとが出てくると、途端に現実味が増すよね

最後、ヴェネツィアだったね

ヴェネツィアも、過去において2ヶ月、雨が続いた可能性が微レ存

でも、あの世界線において、もう東京は晴れることがないんでしょ?

陽菜が再び祈らない限りわね、多分

もう力は失われたのでは? 陽菜が天候を元通りにするという祈りより、穂高の陽菜を取り返すという祈りの方が優先されたんでしょ、きっと。後ね! 花火大会のシーン、好きだったよ

なんかドローンで撮ったような映像だったよね。打ち上げ花火は、下からでも横からでもなく、ドローンで見る時代だよ

ご飯のシーンが良かったよね。なんかジブリっぽさを感じたよ。ご飯をね、美味しく描こうという意気込みを感じたよ

うーん、そうかなあ?

ぱくって食べたシーン。よくジブリのご飯は美味しそうって言われるじゃない。あのシーン、ご飯が美味しそうに感じた

ぺこらさん、お腹が空いていたのでは?

え、そうかな? 他には、うーん。色々あった! 盛りだくさんだった! もう1回、観よう!!

いいよ

終わりに

 と言うわけで『天気の子』期待以上に面白く「やっぱり新海誠、追ってて良かったなー」と素直に感じた次第です。
 前作が大ヒットしたので大きなプレッシャもあったでしょうに、しっかりと作り込んできてくれて嬉しい限りです。また、観に行こうかしら。

合わせて読みたい

 感想の途中に書きました『未来のミライ』と『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の感想も書いています。よろしければ、こちらもどうぞ。