雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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10年を経て「お前たち」を肯定する『劇場版 輪るピングドラム』の感想(ネタバレあり)


 幾原邦彦監督による映画『RE:cycle of the PENGUINDRUM』の「[前編] 君の列車は生存戦略」と「[後編] 僕は君を愛してる」を見ました。
 感想を不用意に語ってしまうとネタバレに抵触しそうなので、ネタバレありと初めに宣言しておきます。

アニメ版『輪るピングドラム』について

 2011年7月8日放送開始──『輪るピングドラム』の第1話はセンセーショナルでしたね。
「生存戦略ー!」からの、「ROCK OVER JAPAN」のカバーからの、スタイリッシュ脱衣、そして極めつけの名台詞「きっと何者にもなれないお前たちに告げる、ピングドラムを手に入れるのだ」はインパクト抜群でした
 この部分だけを抜き出した動画がニコニコ動画にアップロードされ、何度も繰り返し視聴したことを覚えています。
 2話目の荻野目苹果登場回もラストの展開が急で、よく記憶に残っています。
 しかし、私自身は3~4話くらいで脱落してしまいました。当時は「ちょっと違うかな」と思ってしまったのです。

劇場版『輪るピングドラム』について

 アニメ版を見ていないので分かりませんが、基本的には新作カットを加えつつの総集編、の様子です。
 どのカットが新作で、どのカットが元からあるのは分かりませんでしたが、物語全体を振り返ったり、俯瞰するようなシーンが多々あったので、その部分が新作カットかなと感じました。
 前編、後編を通しで見ましたが、ぶつ切り感や唐突さはなく、スムーズに最後まで見ることができたので、完成度の高い再構成ではあるのかと


 劇場版を見終えた後に、気になったのでアニメ版の最終話付近を視聴しましたが、展開自体はアニメ版準拠というか大筋では変わっていないのですね。
 しかし、大枠での印象として、アニメ版では突き放されている感を覚えたのに対し、劇場版では肯定されている感を強く覚えました
 それは、たとえば荻野目桃果の「きっと何者かになれるお前たちに告げる」であり、後編OPにおいて炎に包まれるのではなく、炎から飛び出る荻野目苹果であり、「愛してる」です。


 古い言葉で恐縮ですが、セカイ系に列なる作品のひとつとして、アニメが放送されていた際に見ておくべきだったなと感じました。
 妙な表現になりますが、呪いに掛かっておきたかったです。10年前、アニメ版を見て呪いに掛かっていれば、今年、10年越しに劇場版を見て肯定されることで、呪いが解けるを体感できたのではないかと……


 他作品もあわせて考えることもできそうです。
『魔法少女まどかマギカ』の後、311以後にアニメ版『輪るピングドラム』が登場したのは、なにかの運命を感じます。そして『天気の子』と『シン・エヴァンゲリオン』を経て再構成された劇場版『輪るピングドラム』……。
 考察はアニメ批評家に任せたいですが、世の中の出来事とも含めて見ると、気づきが多いのではないかと感じました。

終わりに

 アニメ版、全24話は時間的にも見る気になれないので、この劇場版を見て『輪るピングドラム』の世界に触れることができて良かったです。
 そして幾原邦彦監督の次の作品は、リアルタイムで追いたいですね。