雲上四季〜謎ときどきボドゲ〜

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CLAMP『ツバサ』全巻を一気読みして(ネタバレあり)

 皆さん、こんにちは。秋山です。
 CLAMPの『ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-』を読みました。この年になって、初めてCLAMP作品にまともに触れました。
 いやはや、参りました……というお話です。
 途中からネタバレありなのでご注意を。

ツバサ―RESERVoir CHRoNiCLE (1) 少年マガジンコミックス

ツバサ―RESERVoir CHRoNiCLE (1) 少年マガジンコミックス

  • 作者:CLAMP
  • 発売日: 2003/08/12
  • メディア: コミック

秋山とCLAMP

 CLAMPとの出会いは、中学の図書室で出会った、田中芳樹の『創竜伝』の表紙であった、と記憶しています
 小学校1年のときに、なにかのきっかけで『宇宙皇子』のアニメを見て、翌年、カドカワノベルズ版の小説を妖夢編の途中まで読みました。いのまたむつみの表紙イラストが刺激的で、同級生に「お前、学校にエロ本、持ってきてるんじゃねーよ!」と言われたことを今でも覚えています。
『宇宙皇子』は妖夢編の途中から好みの展開ではなくなってしまい離れたのですが、以降もアニメイラスト風の表紙の本は面白いという印象があり、『創竜伝』は見つけた瞬間にときめきを覚え、しかし図書委員の目線を気にして、京極夏彦『魍魎の匣』と一緒に借りたのでした。
 結果として『創竜伝』も悪くはなかったのですが、『魍魎の匣』が面白すぎて、シリーズ第2作であることを後から知って『姑獲鳥の夏』に取り掛かるわけですが、それは、また別のお話……ついでに、田中芳樹は、その後『夏の魔術』と『薬師寺涼子の怪奇事件簿』を読み、ジュヴナイル系小説家と思い込みましたが、ミステリーランドの『ラインの虜囚』で、その素晴らしさに気づき『七都市物語』と『マヴァール年代記』を経て、無事に『銀河英雄伝説』に辿りつくことができました。実は『アルスラーン戦記』の方は未読なので、いずれ……。

秋山とCLAMP続

 閑話休題。
『創竜伝』でCLAMPを知った後、アニメ版『カードキャプターさくら』が始まりましたが、当時、秋山がもっともハマっていたのは上遠野浩平『ブギーポップは笑わない』であり、魔法のステッキを振り回す魔法少女はお呼びでなかったのです……。
 とは言え『CCさくら』は、当日、絶大な人気を誇っており、基礎教養みたいな雰囲気を感じたので、その後に放送された『ANGELIC LAYER』と『ちょびっツ』は、すべて視聴しましたが原作である漫画に触れることはなかったです。
 最も、テンションが上がったのは『XXXHOLiC』と『ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-』の連載が始まった頃で、壱原侑子のデザインに惹かれ、たしか『XXXHOLiC』の1巻だけ読んだ記憶がありますが、ギャグが多い印象で2巻以降を手に取ることはなかったです。
 そして2006年、『コードギアス』でCLAMPのキャラクターデザインに再開し、ルルーシュの格好良さにべた惚れするわけですが、それは置いておきましょう。

ここからネタバレ

……します!

『ツバサ』を読み始めて

 そんなわけで、CLAMPをほとんど知らずに『ツバサ』から入るという、ファン各位におかれましては、おおよそ信じられないような愚行を犯してしまったわけですが、いやはや、想像以上に面白かったですね!
 スターシステムが採用されており、既存作品に登場するキャラクターと同じ顔だけれど、設定は別物、ただし根源的なところは共有している……ということで、CLAMPファンは深く楽しめるけれど、そうでないひとも楽しめるように作られている、と認識して着手しました
 主要登場人物である小狼とサクラが『カードキャプターさくら』から来ており、壱原侑子とモコナが『XXXHOLiC』から来ているということで、黒鋼とファイ・D・フローライト、そしてラスボスの飛王・リードも、それぞれ出自があるのかと思いきや、彼らはオリジナルキャラだったのですね。ちょっと意外です。


 旅の始まりは「まあ、こんなものか」と思いながら読み進めました。
 誰もが巧断(クダン)なる能力を持ち、日常のなかでド派手なバトルを繰り広げる阪神共和国は、川上稔の『奏(騒)楽都市OSAKA』を思い返し楽しく読みましたし、秘術が存在する高麗国は武侠物っぽい雰囲気で、こちらも面白かったです。
 この2国は、こじんまりとした特殊能力バトル物っぽい感じで、構想としてネタ帳に書いておいたけれど、今ひとつ広がりが得られなかったから『ツバサ』におけるエピソードのひとつとして用いることにしたのかしら? みたいなことを考えながら読み進めました。
 ジェイド国のスピリットは、過去の伝説と現在の事件が交錯するミステリ仕立てで、中世ヨーロッパ風の雰囲気も相まって好みでしたし、その後の桜花国を異世界転生物っぽいなと読んでいたら、その上を行かれて構成の巧みさには舌を巻きました。紗羅ノ国と修羅ノ国も、一見バトル物風でしたが、未来から過去にゆき、変化した未来に戻ってくるのは時間物大好きとして終始最高としか言えない展開でした。
 サクラが守られる存在から、自ら打って出たピッフル国は『ツバサ』という作品を、エンターテインメントとしてシンプルに楽しんでいられた最後の国として、強く記憶に残っています。冒険物としても、ミステリとしても楽しく、前半の、純粋に楽しかった頃の『ツバサ』を思い返そうとすると、最初に思い浮かぶのはドラゴンフライに乗って、宙を駆るさくらの姿ですね

『ツバサ』後半について

 東京国以降の『ツバサ』については、もう驚きを禁じえないと言いますか、今までの甘々な展開は前哨戦に過ぎなくて、ここからCLAMPの本領発揮ってこと? と思いながら読みました
 小狼が抜け、『小狼』が加入し、サクラが魂と躯に分かれ、ファイはユゥイで、サクラも写身で、いきなり四月一日君尋が出てきて、壱原侑子が対価を求めて……何度も、わけわからんお手上げ! いぇい! ってなりそうになりましたが、冷静に論理的に考えながら読むと、その構成の妙と言うか、説明難度の高いことを、彼らの時間軸に沿ってやっているのだなと分かってきました。
 個人的には、ファイが好きでした
 登場時からおちゃらけた様子で、あまり好きではなかったのですが、左目を奪われ、吸血鬼になった後、その大事さに気づきました。最高のムードメーカーだったんですね。ファイともこなが盛り上げてくれたからピッフル国までの旅は楽しかったのです。だから、さくらからも笑顔が失われるチェスの国は虚無としか言いようがなかったですし、セレス国もアシュラ王の不気味さもあって悪い予感しかなかったですね。


 それだけに!
 黒鋼が快刀乱麻を断つが如くファイを救ったシーンは大喝采でしたし、日本国で目覚めたファイと左手を失った黒鋼が、初めて顔を合わせる場面では、ページをめくる前に、


黒たんって呼べ、黒たんって呼べ、黒たんって呼べ、黒たんって呼べ、黒たんって呼べ


 と100回くらい念じてからページをめくったら、黒たんではなかったけれど、ちゃんと黒鋼ではなくて、黒様って読んでくれていて、ようやくファイが戻ってきてくれた! 黒鋼は左手を失ったけれど、手負いの獣ほど強い理論で強化されるだろうし、もう怖いものは何もない
 後は、離反した小狼をぶっ飛ばし、本物が写身を吸収し、ついでにサクラも融合して、壱原侑子が死んで、飛王・リードがしょんぼりして大団円だこのやろー!
 とテンション上げて一気に読んで、四月一日まわりは不明点が残りましたが、だいたいフィナーレまで含めて最高の結末でした

『ツバサ』を読み終えて

 この作品の独自な点は、変則的なループ物であることでしょう。
 つまり、時間軸Aと時間軸Bが存在しており、時間軸A上では本物の小狼とサクラがおり、時間軸B上では写身となる小狼’とサクラ’がいて、読者が1巻から時間を共に過ごしているのは、本物ではなく写身の方である仕組みが斬新です
 この構図を知ったとき、感情移入する先を見失い、非常に困惑しました。何故って、読み手として長らく旅をしてきたのは、写身の小狼’なのに、いきなり彼が敵に回って、本物の小狼がパーティに加入しましたと言われても、気持ちの整理が追いつかず困るからです。
 でも、この困惑は読者以上に、黒鋼とファイが感じているわけで、その点、彼らの整理の仕方は、ほんとうに分別のついた大人と言うか、聖人君子レベルです。


 テーマとしては本物/偽物の亜種であると捉えました
 同じような系統の作品としては、デジタルゲームですが『ファイナルファンタジー7』が挙げられるでしょう。
 ここから、いきなり『FF7』のネタバレをするので、未プレイの方は大急ぎで戻っていただきたいのですが、『FF7』においても、物語の最序盤から主人公として登場し、元神羅カンパニーのソルジャーにしてティファ・ロックハートの幼馴染であるクラウド・ストライフは、実は、彼は彼の人生を歩んでいなかった……ということが物語の中盤に明かされます。
 あるいは、こちらもデジタルゲームですが『Fate/stay night』や『Fate/Grand Order』における英霊エミヤとジャンヌ・ダルク・オルタは、度々、本物とは何か? 偽物とは何か? という問いかけの象徴として扱われます。


 自分が偽物ではなく本物であると主張することや、何物にもなれない自分が何物かになれる自分を目指す話は、青春物においてはよく見られ、哲学で言うところのレゾンデートルみたいなところにも通じるように思います……そう言えば、アニメ『ちょびっツ』の第1期エンディングのタイトルが、まさに「レゾンデートル」でしたね。
 セレス国と日本国を巡り、ファイと黒鋼が、それぞれ自分たちに決着を見出した後、本物の小狼と共に、半日をループする玖楼国を訪れてからの展開は圧巻でしたね。旅の終わりを迎えたとき、写身の生きた世界ではなく、本物の生きた世界、言わばほんとうの歴史が明かされ、壱原侑子を巡る、クロウ・リードと飛王・リードの過去がほのめかされました。
 ここで、ようやく物語が一本の線でつながりました。
『XXXHOLiC』を読んでいないので、完全にすべての伏線が回収されたとは思いませんし、不明点も多くありますが、ふたりのツバサの物語という点においては、きれいに終わり、満足しました。

次に読む予定のCLAMP

 星史郎と封真の兄弟と、神威と昴流の双子は、次元の壁を突破する能力の所有者なので、原作の設定を踏襲しているものと思っていました。だから原作が異なること、そして原作においては、そもそも吸血鬼ではないことを知って、心底、驚きました。
 神威と昴流が吸血鬼としての生活する物語を読みたかったのに、星史郎が双子の吸血鬼に強い恨みを抱き、狩人となる物語が読みたかったのに……この気持ちは、いったいどこにぶつければよいのでしょうか……?


『ツバサ』の記憶が薄れない内に『XXXHOLiC』を読みたいですね。
 後日談となる『ツバサ-WoRLD CHRoNiCLE-ニライカナイ編』も気になります。
 キャラクターデザイン的に神威と昴流、有洙川嵐、阿修羅王と夜叉王が好みだったので『聖伝-RG VEDA-』、『東京BABYLON』、『X』は読みたいですね。
 他にオススメがあったら教えてください。

終わりに

 気の向くままに書き綴ってしまいましたが、ほんとうに面白かったですし、漫画作品として上手いと思わされる箇所が多くありました。
 ただのバトル漫画、恋愛漫画ではなく、優れたパラレルワールド物のSF作品であったのは発見です。偶然に出会えたことを感謝しつつ、あるいは、このタイミングで出会えたのはCLAMP風に表現するならば、必然、であったのかもしれません。