じゃんきちさんのマーダーミステリー『ランドルフ・ローレンスの追憶』を遊びました。
ネタバレには配慮していますが、気になる方は回れ右推奨です。
伝説的な作品『ランドルフ・ローレンスの追憶』
『ランドルフ・ローレンスの追憶』という作品名を聞いたのは、昨年の秋から冬に掛けてだったと記憶しています。
Twitterにおいて絶賛のコメントしかなく、しかし徹底したネタバレが敷かれているのか、その内容はおろか、どういう作品なのかも、ほとんど分かりませんでした。
しかし、たとえばマーダーミステリーとして別格であるとか、殿堂入りであるとか……ゲーム時間が5時間というところからも、なんとなく窺えるかもしれません。
公演の開催難度が、どうやらとても高いらしく、作者のじゃんきちさんしかGMをできず(現在は、Rabbitholeさんでも開催されています)、ツテがないと遊べない、そんな印象もありました。
なんとか遊ぶ機会を設けられないか……いえ、実は、何度かタイミングはあったのですが、今年の春はコロナの影響もあり、いろいろとイレギュラーで、うまく調整することができませんでした。
と言うわけで、7月の終わり、遊びたいと思い続け半年以上も経って、ようやくその機会に恵まれました。
ネタバレについて
私はミステリ読み出身ということもあって、比較的、ネタバレには敏感な方だと自分では思っています。
やや過激かもしれませんが、題名と著者名以外は表紙含めネタバレだと思っていた時期もあります。ほんとうに好きな作家は、あらすじを読まず、帯も読まず、表紙もなるべく見ずに、まっすぐに本文に向かっていました。
自分はそこまで厳格なのに、感想ブログをやってるのってどうなの? と思わないでもないですが、性格的に面白かったものや好きなもの、良いなと感じたものを広めたい派なのと、世の中には、自分ほどネタバレに対して厳格ではないひともいるので、そういう層に向けてメッセージを出しても良いかなと感じています。
と言うわけで、意識的に目を瞑っていたこともありますが『ランドルフ・ローレンスの追憶』は、ほとんど予備知識なく遊ぶことができました。公演開始から、ずいぶん時間のたった作品ですが、まだネタバレに協力し、これから遊ぶプレイヤーのために自制してくださったすべての方に、心から感謝します。
『ランドルフ・ローレンスの追憶』について思うときに思うこと
巨大なホールケーキを思い浮かべて見てください。
一般的なケーキであれば、なにも考えずに包丁を入れて切り分けていきますが、このケーキは、とても巨大です。
切り分けるには巨大な包丁が求められますし、切り分けたものを載せるお皿も特別に用意しなければなりません。いっそ、スプーンを手に端から崩していったり、まずはてっぺんに乗っかっているイチゴをつまむところから始めたり。
取っ掛かりを見出すことすら厄介です。
『ランドルフ・ローレンスの追憶』について考え、感想を語りたいと思ったとき、果たしてどこを取っ掛かりにするのがいいのか、どういう立ち位置で、どういう姿勢でもって述べればいいのか、とても悩ましいです。
上述のネタバレ問題もあります。
悩んだ結果「とにかくすごい作品」と手放しで褒めることもできます、が、もう少し模索してみましょう。
規格外の作品
マーダーミステリーという枠でくくったとき、『ランドルフ・ローレンスの追憶』を含めて考えてしまうと、とても厄介なことになります。
今まで、私のなかでマーダーミステリーと言えば、『王府百年』『双子島神楽歌』『ヤノハのフタリ』の3作が原体験として色濃く残っており、どんなマーダーミステリーを遊んでも、大なり小なりこの3作と比較してしまっていました。
しかし『ランドルフ・ローレンスの追憶』を体験してしまった今、昨日までと同じ尺度でマーダーミステリーを見ることができません。思い出補正があるから『双子島神楽歌』にはかなわないけれど、これに迫る面白さではある。と評価できていた作品であっても『ランドルフ・ローレンスの追憶』と比較しようとすると、足元にも及ばなかったりするのです。
ようやく、本作をして別格であるとか、殿堂入りであるとか、そういった表現をされていた方々の気持ちが分かりました。あらゆる意味で規格外なのです。見た目こそ人の形をしているけれど、巨人と常人を比較することはできませんよね。それと同じです。
満足度の源泉
飛び抜けて傑出した箇所が多く、余人の追随を許さない規格外の作品ではあるけれど、完璧な作品ではないな、とも感じました。
マーダーミステリー……と言うと、やや括りが狭いので『王府百年』と『約束の場所へ』くらいに留めておきましょうか。2019年末までに遊べたマーダーミステリーの多くが抱えていた瑕疵を、鮮やかに塗りつぶしつつ、美しく解決している点も多いですが、この形式だからこそ……というのもあるなと感じました。
実際には、それらの穴……と言うほどのものではなく、間隙レベルのものは、公演回数100以上をこなしたGMじゃんきちさんによって丁寧にケアされ、むしろ安定感をもって迎え入れられるので、快適ですらあります。
そう、5時間というゲーム時間から高難易度を予感させるのですが、実際には卓越したホスピタリティで包まれるので、マーダーミステリーの中では楽な部類に入るかもしれません。正直、5時間が一瞬でしたし、なんならもっとこの物語世界に浸かっていたいとさえ思いました。
光が照らす先
ゲームマーケット2019秋の2日目、JELLY JELLY CAFEのステージに、きつねさんが登壇し、お話されたことのひとつで、自分にとって革新的だったので覚えているフレーズがあります。
それは
「手掛けた作品に指摘を受けた場合は、次の作品で活かそう」
というものです。
現在、じゃんきちさんは次の作品として『VOSTOK(ボストーク)』を開発中とのことで、こちらの完成、そして公演開始が楽しみです。
先ほど #SCRAP生放送 で発表させていただいた新作マーダーミステリー #Vostok !
— じゃんきち(佐藤 倫) (@Junkie_werewolf) 2020年4月24日
プレイヤー人数は8名、鋭意製作中です
公演開始をお待ちください😌#体験ジャンキー pic.twitter.com/YNwWFRvaVh
終わりに
長くなりましたし、内容に関してまったく言及していないので、ひとによっては、なんのこっちゃという感じかもしれませんが、『ランドルフ・ローレンスの追憶』という作品に触れての正直な感想、でした。
なかなか遊ぶ機会の少ない作品かもしれませんが、是非、遊んでみてください。