雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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パンドラの人狼『冥土の土産に花束を』『生命燃やして美しく』の感想

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 じゃんきちさんの『パンドラの人狼』から『冥土の土産に花束を』『生命燃やして美しく』の2作を遊ばせていただきました。
 ネタバレには配慮していますが、気になる方は回れ右推奨です。

パンドラの人狼に対する事前予想

『パンドラの人狼』という言葉を、最初に聞いたのは今年の頭でした。
 ギリシャ神話に登場するパンドラ及びその箱は有名な話で、個人的にはバベルの塔とシュレディンガーの猫と同じくらい御用達です。なんの御用達なのかは、よく分かりませんが……。


 最初に聞いたときは、タイトルの他に、
レギュレーションが隠されている(つまり、内訳が分からない)
1回しか遊べない(つまり、チューンナップされている)
 ということを教えていただいたので、いわゆるランダム編成のことかと思いました
 私は、かつてあった人狼クローンのひとつ通称欧州で、100回くらい短期村を遊んでいましたが、主にランダム編成を楽しんでいました。……と書くと、ちょっと変態チックですけれど、断わっておくと人狼BBSのF国出身で人狼審問と瓜科国を経ての欧州です。
 閑話休題、ランダム編成というのは、人狼が何匹いるか分からない、第3陣営がいるかいないかも分からないという狼狂占霊狩のレギュレーションがランダムで決まるもので、そのバランスは崩壊しているとも言えます。ですが、それ故にプレイヤーは限られた時間、全力を出す必要があり、そこが楽しかったですし、極稀に奇跡的に良バランスの編成ができあがり、それが面白かったりもしました。
 1回しか遊べない、という点において、いわゆるランダム編成のようにレギュレーションが不明、しかし面白く遊べるようにバランス調整がされているもの。それが『パンドラの人狼』である──


 という事前の予想は、大きな間違いでした

パンドラの人狼とは

 では『パンドラの人狼』とは何か?
 ネタバレをせずに、この問いに対して答えるのは、とても難しいです
 と言うのも、おそらくこのゲームのコンセプトと言うか、デザイナーの目指すところ、それ自体もゲームのサプライズのひとつと言えるからです。しかも、このコンセプトは多重になっていて『パンドラの人狼』という人狼の上にあるレイヤーの他に、各タイトルのレイヤーがあって、この多層構造が、またネタバレできない魅力を内包しているのです。
 敢えて言うならば、今回、じゃんきちさんGMの元『冥土の土産に花束を』と『生命燃やして美しく』という2つのシナリオを遊ばせていただいたのですが、


・14人が向かい合って座った。
・誰が人狼なのか議論した。


 くらいしか共通点がないくらい、各タイトルは別物なのです。
 なんじゃそりゃ、と思われるかもしれませんが、これ以上はネタバレなので、にんともかんとも……。

ゲームの感想

 激烈に面白かったです……!
 今年に入ってから触れた新たなコンテンツとしては、五本の指に入る面白さでした
 想像していたよりも、はるかに物語要素があって、人狼というソリッドなゲームに、色や音、物語を被せることによって、謎解きやマーダーミステリーと同じような、リアル体験型のイベントに仕立て上げているなと感じました
 従って、マーダーミステリーほど、プレイヤー全員でせかいでひとつだけの物語を紡ぎあげたという感情には至りませんでしたが、一本の舞台を見終えて、飛び入りの観客として最大限にがんばった、というふうには感じました。


 惜しむらくは14人というプレイヤー人数と、適性もしくは経験を求めることでしょうか
 上述の通り、遊ばせていただいた『冥土の土産に花束を』と『生命燃やして美しく』は、ぜんぜん違う世界観やストーリー、役職が被せられているので、まったく共通点が見つけられないくらい別物なのですが、その根底にシステムとしてあるのは、やっぱり人狼なんですよね
 従って、人狼という、限られた時間で主張を通したり、ポーカーフェイスで騙したりすることに対し適性があったり、そういう経験を、それなりに持っていない方は、十全に楽しめないし、ついていけないかも……と感じました。


 幸い、私はネットでもリアルでも、長期でも短期でも、あらゆる人狼を遊んだ経験があり、根は人見知りで臆病ですが、それを隠せるテクニックを知っているので、なんとかなりましたし、その上で「これは面白い、傑作では!?」となりましたが、すべてのひとが同じように感動できるとは限らないな、というのが率直なところです。
 少なくとも、じゃんきちさんの別作品である『ランドルフ・ローレンスの追憶』ほど、広くオススメはできません。


『パンドラの人狼』は、プレイヤーを選びます
 しかし、だからこそ、刺さるひとには、より深く刺さります
 実際、私は『パンドラの人狼』と『ランドルフ・ローレンスの追憶』を比較すると──ぜんぜん別種の作品で、本来比較は不可能なのですが──前者の方が好みです。が、世の中的には、後者の方が多いだろうな、と漠然と感じます。


 後は、14人というプレイヤー人数ですね。
「この機会を逃したら、2度目はないかもしれない」そう思って参加しましたが、私自身、4月以降、2時間以上、初対面の方と時間を過ごしたのは、この日が初めてでした。
 ウィズコロナの時代、遊ぶ機会を設けることは至難でしょう……

終わりに

 好きという気持ちが暴走して、途中からあらぬ方向に行ってしまいましたが、途中に書いた刺さるひとには刺さります、という感想がすべてであるとも言えます。
 どこへなりとも喜んで馳せ参じますので、是非『パンドラの人狼』を遊ぶときはお声掛けください。