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泊まれる演劇 In Your Room『ANOTHER DOOR -ホーリーシーズン-』の感想

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 夜のホテルを舞台にしたオンラインイマーシブシアター、泊まれる演劇 In Your Room『ANOTHER DOOR -ホーリーシーズン-』に参加しました。
 ネタバレには配慮していますが、気になる方は回れ右推奨です。

イベントの概要

『泊まれる演劇』とは、実際のホテルを舞台に繰り広げられる没入型演劇(イマーシブシアター)です。観客はホテルにチェックインし、至るところで繰り広げられる芝居を観劇したり、あるいはエキストラとして参加したりします。
 京都のモーテル・アネモネで開催されるリアルイベントの他、Zoomを用いてオンラインで配信されるシリーズも展開されています。こちらは『泊まれる演劇 In Your Room』と題され、今までに3作が開催されており、この記事で紹介する『ANOTHER DOOR -ホーリーシーズン-』は4作目という位置づけです。

『ANOTHER DOOR -ホーリーシーズン-』について

 前作『ANOTHER DOOR』と同じく、脚本・演出は山崎彬(悪い芝居)。
 ホテルで開催されたオンライン・マッチングイベントを覗き見するという形式も同じです。ただ、全体的にスケールアップしており『ANOTHER DOOR』は男女3人ずつ計6人でしたが、今回は男女4人ずつ計8人なので見応えは十分ですし、その回に参加しているプレイヤーたちの介入によってエンディングが変わるため、8人もいるとパターンが多岐にわたるため、複数回の参加が意味を持ってきます

『ANOTHER DOOR -ホーリーシーズン-』の感想

 プレイヤー自身が恋のキューピッドとなって、恋愛リアリティーショーに介入したいかどうか。この作品に対する評価は、この問いかけに落ち着くように思います
 私自身は好みとしてミステリ小説やSF小説が好きで、たとえば不可能犯罪を論理的に解決する探偵が好きだったり、何度も同じ時間軸をループしながら閉鎖環境から脱出を目指すSFが好きです。
 片想いだったり両想いだったり、想いが伝わって絆されたり、恋愛が成就したり、すれ違ったり、道を分かつことになったり。そういう恋愛物も嫌いではありませんが、好んで触れることはしません。
 体験型/参加型/没入型の演劇には興味があるので、今回も参加しましたが『ANOTHER DOOR』のときと同じように、やっぱりノットフォーミーでした。


 ただ、前作との比較という観点では、今回の方が好みでした
 プレイヤーは8つの部屋を自由に覗き見ることができるのですが、あんまり好き勝手に移動していると、一連の流れを見ないと汲み取れない心の機微や揺れ動く感情を見落とすことになり、深い理解を得られないまま作品の幕が降りてしまいます。
 今回、私は、ひとりの女性を追い掛け、彼女が2人の男性と対話する様子を覗き見ました。結果、8人の登場人物のうち、追い掛けていた女性1人は深く理解でき、彼女と話した男性2人は浅く理解できましたが、残りの5人に関してはさっぱりです。女性2人に至っては、エンディングで初めて声を聞いたくらいです。
 と言うわけで、私が体験した『ANOTHER DOOR -ホーリーシーズン-』は半分以下と言えます。少なくとも、もう1回は参加しないと半分も見えていませんし、エンディングが変化することを考えると、4回くらい参加して、はじめて全貌に目が行き届くように思います。
 この、世界観の深さ、1回の参加では掴みきれない大きさという観点において、前作よりも良いと感じました


 恋愛テーマが好みではないので、2回目の参加はありませんが、好きなひとは多いだろうなと感じましたし、世の中的には木下半太氏が脚本を手掛ける『ROOM』シリーズより、山崎彬氏の『ANOTHER ROOM』のファンの方が多そうですし、繰り返しの参加も多そうです。
 それだけ普遍的なテーマを扱っていると言えますし、なによりもプレイヤーと年齢も近い、等身大の役者さんが、Zoomの向こう側で失恋話を吐露し、画面越しの恋に心を揺さぶられている様子を見ると、つい感情移入してしまい、応援したくなる気持ちが喚起されます。

終わりに

 話の内容は好みではないけれど、その作り方は好きなので、なんだか小学生が好きな子にイジワルするみたいな文章になってしまいましたが、適宜、解釈いただければ幸いです。
 公演期間は約1週間。恋愛好きな方は、見逃すことないようご注意ください。