雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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物語体験を超えたムケイチョウコクのイマーシブシアター『One Room ⇔ dramaS -落下する記憶-』の感想


 クリエイションチーム、ムケイチョウコクによるイマーシブシアター『One Room ⇔ dramaS -落下する記憶-』に参加しました。
 ネタバレには配慮していますが、気になる方は回れ右推奨です。

イベントの概要

 新しく立ち上がった団体、ムケイチョウコクさんによるイマーシブシアターです。
『遠き明日への子守唄』のAGATAさんが脚本を書かれているのかしら? Twitterで見かけ興味を持って、アドバンス公演の初日に参加しました。

イベントの感想


 イマーシブシアターは演劇の延長線上にある概念ですので、基本的には受動的と言える作品です
 どの役者さんを注視するのか、劇場のどの場面に立つのか、主体性はどのような姿勢で鑑賞するか、その程度しか求められません。イマーシブシアターにおいて観客は、顔のない幽霊のような存在で、物理的にその場に存在はしていますが、物語内世界においては存在しません。
 中には観客に役割がある、インタラクション要素を含む作品もあります。役者に求められたときに、なんらかの役割を果たすために、物語を稼働させるための機能として、あるいは脇役という多数の存在として、物理的に存在する理由を与えられることもあります
……と、言うのが、わたしのイマーシブシアターの定義でした。


『One Room ⇔ dramaS -落下する記憶-』に参加したとき、わたしのイマーシブシアターという概念は一新され、新しい次元に辿り着いてしまったなと感じました


 どこまでがネタバレに抵触するのか、今ひとつ分からないので、曖昧な表現になりますが……、本作は、とにかく主体性が求められる作品でした
 イマーシブシアターという観点では、ほぼ1on1で構成されており、あるいはイマーシブシアター(没入型演劇)というジャンル分けは正しくなく、観客参加型即興演劇とした方が適切かもしれない。そんな作品でした。


 はじめて触れるタイプの作品は、勝手がわからず困惑しますし、不安を抱きます。
 こういう楽しみ方でいいのか、こういう振る舞いでいいのか、悩みつつ手探りで対応することになるのですが、わたしは、こういった手探り感がとても好きです
 初めてが好きですし、既に多くの体験型コンテンツに触れていたので、その場でもなんとかなりました。五味というキャラクターにも恵まれました。
 しかし、他の参加者はどうだったのかしら?
 池袋からの帰り道、そんなことを考えました。


 ホスピタリティが高いとお見受けした方は、時間を持て余している他の参加者に、キャストの如く話しかけにいき、物語を破壊しない程度に、作品世界の構築に貢献されていました。
 他にも「え、それ、いま即興で考えたんですか?」と瞠目せざるをえないほど、長文の名台詞を自信たっぷりに言う方もいて、感心する場面が多々ありました。
 その一方で、明らかに困惑している、どう振る舞っていいか分からずキョロキョロしている方、困った挙げ句、俯いている方もいて、あまりに新しすぎた結果、一部の方には早すぎる作品形態だと感じました


 昨今、物語体験型のコンテンツが増えており、プレイヤーの物語に対する関心度の高さを感じます
 わたし自身、物語が好きで、参加型/体験型/没入型のコンテンツには目がありません。
 今は、まだ、物語は作り手が用意し、プレイヤーが受け取る、矢印は一方的であることが多いです。
 もう少しすると、プレイヤー自身が即興で物語を作り上げ、他のプレイヤーと共に紡ぎ上げる、物語表現型や物語創作型とも言えるコンテンツが出てくるのではと考えています
 しかし、この形態は、プレイヤーに多くを求めます。即興で物語を考え、それを表現し、自らで自らを演出する能力。
 物語や展開が、明後日の方向に行ってしまう可能性もあり、制御が非常に難しいです。
 多くの試行錯誤を繰り返しながら、その領域に近づいていくのだろうなと考えていましたが、本作『One Room ⇔ dramaS -落下する記憶-』は、そういった諸々を一気に飛び越えて、新次元に飛び込まれていました
 驚きと困惑を抱えつつも、それ以上の喜びと嬉しさを持って、受け入れたいと思います

終わりに

 様々な思いや考えが去来して、予想していた以上に長くなってしまいましたし、散漫となってしまいました。
 インパクトのある作品に触れてしまうと、それだけ言葉が溢れ出てしまうとしてご容赦ください。
 今秋に向け、第2弾も企画中とのことで次回も楽しみです。