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映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』の感想(ネタバレあり)

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 庵野秀明監督による映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』を見てきました。
 一部の方にとっては、並々ならぬ思い入れがある作品でしょうが、私にとってもそうです。正直なところ見る前は、見終えた後に語ることがあるかどうか不安だったのですが、見終えた今、書いておきたい気持ちが高まりすぎて、持て余しているくらいなので書くことにします。
 ネタバレ全開ですので、ご注意ください。

ネタバレの前に

 と言っても、いきなり一行目からネタバレしてしまうと、見るつもりがなかったので視界に入ってしまったという事故も起こりうるかと思います。
 まずは、そっと半年ほど前に書いたネタバレのない記事へのリンクを張っておくので、ネタバレを踏みたくない方は、こちらへどうぞ。そもそも『エヴァンゲリオン』という作品が、どういう作品なのか? と、知らない方への説明もあります。

映画の感想

 前置きはこれくらいにしておきましょう。
 で、ネタバレ感想ですが。
 まずは、


とても良かった


 という第1声から始めさせてください。
 正直なところ今回の『シン・エヴァ』に対する私の期待値は、とても低かったです
 どうせ終わらないし、エヴァなのかエヴァでない何かなのかは分からないけれど、続くことになるだろうし、あるいは終わったとしても、すべてに決着がつくことはないだろうし、多分、今回のシンジくんの物語だけがひっそりと終わり、我々は、また次のシンジくんか、次のエヴァンゲリオンに希望を託すことになるのであろう。そんなことを、わりと心の底から信じながら劇場に足を運びました
 映画が始まってからも、期待値は低いままで、どこか冷めた目で見ている自分を意識し続けていました。


 なにかが、おかしい。


 遅ればせながらようやく気付いたのは、葛城ミサトの心中が語られ始めてからです。
『エヴァ破』において「行きなさい!」と応援したにも関わらず、『エヴァQ』において信じられない勢いで手のひら返しを見せた葛城ミサトには、ずっと裏切られた想いを抱いていました


 はじめて『エヴァQ』を見たときに、その序盤の展開があまりに衝撃的で、碇シンジの目線で物語を見てしまったが故に、葛城ミサトから見えている風景を、まったく想像して来なかったのは、うかつとしか言いようがありません。
 赤木リツコが、ミサトの想いを語り始めた瞬間、心のなかを覆っていた霧が晴れていくのを感じました


 最初に『エヴァ序』を見たとき、我々は期待したはずです
 このシンジくんならば上手くやれるかもしれない。誰もが救われる、おめでとうエンドにしか辿り着けなかったシンジくんに絶望した我々が、こうすればうまく行ったのではないかと夢見たエンディングへと辿り着けるのではないかと。そして『エヴァ破』で確信したはずです。このシンジくん、やればできるじゃないかと。
 しかし『エヴァQ』に至って、絶望の底に叩き落されたのです。中途半端にがんばったせいで、よりひどいことになった、と。
 だからこそ『シン・エヴァ』には期待を抱けなかったのです。期待して、また裏切られるのが嫌だったのです


 ミサトが全隊員を避難させ、リツコすら避難させ、ひとりで吶喊するシーンは涙を止められませんでした。
 人の手で槍を創り出すという奇蹟が、ご都合主義的に描かれたことには目を瞑りました。零戦のように飛んでいくミサトを見て、約7年間、誤解していたことを詫びると同時に、彼女がある意味において、救われたことに涙しました


 碇ゲンドウの真実は、予想されていたもの中では、もっとも低俗なものではなかったでしょうか
 これだけ多くの人々を巻きこんで、これだけ世界に影響を与えて、それでやりたかったことが正しくエゴだったことには衝撃を禁じえません。しかし一方で、ここまで来てしまったら、もう、この理由しかなかったという気もしないでもないです。少なくとも、もっと高尚な何かを、あそこで打ち上げられていたら収拾がつかなかったことでしょう。碇ゲンドウは、分かりやすく消費され、視聴者を楽しませるエンターテイメントの犠牲になったのではとも感じました。


 そこから先の展開は、もう最高以外の何物でもないでしょう。
 絶対に報われようがないであろうと思っていた、すべての登場人物たちが、皆ひとしく、これ以上はない形で救済されました。
 個人的な好みで言えば、ずっと……ずっと、アスカには幸せになって貰いたかったのです。でも、彼女は幸せになれないことが物語の要請上、義務付けられた存在でもありました。しかし、そんな彼女にも救いが与えられたのは、もう、ほんとうに、胸が締め付けられました。


 そして、シンジくん。
 アスカ以上に、彼は行き詰まっていましたね。
 懐かしのセカイ系的な表現をするならば、物語の主人公は、いつも世界を取るかヒロインを取るかの二択を突き付けられてきました。世界を取るならヒロインを切り捨てなければならず、ヒロインを取るなら世界を切り捨てなければならない。
 そもそも、この世界において綾波レイという存在は既にして失われており、アスカも本来のアスカではなくなっています。もはやヒロインを選ぶというルートはなくなっているのです。いえ、そもそも世界だって、ほぼ滅びています。『エヴァQ』とそれに続く『シン・エヴァ』は言ってみればバッドエンド後の世界線なわけです。
 そんな世界をまるっと書き換え、何もかもを夢見たままにする。
 つまり、世界も救うし、ヒロインも救う。
 ただ、そんなことをすれば、もはや人でなくなってしまいます。
 しかし、ええ、まさかの、しかしでしたね。
 リツコたちが槍を作ったときに、こんなご都合主義的な奇蹟が許されるのかと思いましたが、まさかのシンジくんまで救われるとは……! 世界を救い、ヒロインたちも救い、そして自分をも救う! これが令和のセカイ系でしょうか


 令和のセカイ系……冷静になって考えてみると、おめでとうルート以上の茶番ではないでしょうか?
 でも……、


とても良かった


 これが、結論です。
 ご都合主義でも、エンターテイメントでも、なんでも良いんです。駅のホームでカヲルとレイが談笑しているのを見られて良かったです。少し距離を置いて、アスカがベンチに座っているのを見られて良かったです。マリがシンジを迎えにきてくれて良かったです
 良かったしかありません。
 もう、ほんとうに、良かったしかありません。
 なんてったって私はハッピーエンド至上主義ですからね! まったく期待していなかったハッピーエンドが見られて、ほんとうに幸せ
 スタッフロールでの、宇多田ヒカルのBeautiful Worldも嬉しい不意打ちでした!
 庵野監督ありがとう! 声優の皆さんありがとう!
 エヴァンゲリオンをずっと、20年以上も追い続けてきて、ほんとうによかった。ありがとう……!

終わりに

 最後までただの感想ですみません。
 考察は他の方にお任せします! 見ていたときは、いろいろと語りたい欲求に駆られるだろうなと思いましたが、正直、情報量が多すぎて、ふわっと理解するので精一杯でした。
 どちらかと言うと、今までの作品の流れを踏まえて『シン・エヴァ』がどういう価値を持っているのかを考えたいですが、これも世のアニメ評論家の方々が、きれいに整理してくれるものと考えています。個人的には、ここ1~2年で封切られた『復活のルルーシュ』と『天気の子』との対比を感じています……が、これを始めると他作品のネタバレにも踏み込んでしまうので、この記事では語らないことにします。


 さて……思っていた以上に長くなってしまいました。
 155分と長い作品なので、もう1回、劇場に足を運ぶべきか悩んでいます。でも……なんとかして時間を作って行くかもしれません。初回は、話を追うのに精一杯だったのと、上述した通り期待せずに見てしまったので、ちょっと色眼鏡を掛けていた気もします。
 うん、やっぱり、もう1回、見ますかね。ディテールを確認して、また記事を書くかもしれません。
 それでは! 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!