サム・メンデス監督によるアカデミー賞の撮影賞、視覚効果賞、そして録音賞に輝いた『1917 命をかけた伝令』を見ました。
素晴らしい作品だったので感想を書きます。
感想
戦争映画は好みではありません。
登場人物に共感しやすい性格のため、過剰に影響を受けてしまうのです。
戦争は悲惨である、争いはなにも生まないというメッセージは重要ですが、気が滅入りすぎてしまうので、あまり摂取したいコンテンツではありません。
本作を見たのは、全編でワンカットに見える撮影であるという点に興味を覚えたからです。
ワンカット映画は、ほとんど見たことがありません。
敢えて言うと『カメラを止めるな』ですが、長さが違います。
従って本作ではじめてワンカットに触れたことになりますが、最初に感じたのは、そのリアルタイム性です。
通常の映像作品ですとシーンを切り替えることで、時間的な経過を示すことができます。ベッドに入りこみライトを消して、次の瞬間、カーテンから日の明かりが差し込み、鳥のさえずりが聞こえてくると「ああ、夜が明けたんだな」と分かります。
しかし、ワンカット映画の場合、時間的な断絶はありません。
映画を見ている、いま我々の現実世界での時間が10分進んだなら、作中でも同じ10分が過ぎているのです。
ここではないどこかで、今ほんとうに起こっていることではないか? そんな現実感を突きつけられます。
撮影技法にも舌を巻きました。
壁を越えた主人公が、眼下に広がる沼地を見て、直進するのではなく迂回することを選ぶシーンがあるのですが、カメラはそのまままっすぐ進み、沼に沿って歩みを進める主人公たちの横顔を捉えるのです。
え、このアングルで撮影できるってことは、カメラマンは躊躇なく沼に入ったってことだよね? 水面下に隠されて足場が用意されていた? それともドローン? いったい、どうやって撮ってるのー!?
と、映像よりも、その撮り方が気になってしまうシーンも多かったです。
上述の沼地のシーンは、まだ想像できますが、シーンによってはカメラマンの立ち位置を確保するのが絶対に無理! みたいなのもあってメイキングが気になります。
ワンカット映画がはじめてだったので、その技法ばかりが気になってしまいましたが、作品そのものも良かったです。
無人地帯とは言え、どこに敵が潜んでいるかも分からない危険な場所を、孤独に進むのは緊迫感があり、ドキドキしながら見続けました。
ラストは、この危険に見合う報酬をもっとあげて欲しい! と思いつつも、この結末こそが、彼がもっとも求めていたものなのかもしれないとも感じました。
終わりに
サム・メンデス監督の祖父、アルフレッド・H・メンデス上等兵は、実際に戦時中に伝令を務めており、祖父から聞いたエピソードを本作には盛り込んでいるらしいですね。
真に迫るシーンは、実体験から生まれたものがあるからでしょう。