アークライト社から日本語版がリリースされている『ディスカバー: 未知なる大地へ』を遊びました。
1人から4人までで遊べるボードゲームです。尚、ひとによっては「ネタバレである」と感じる感想ですので、気になる方は回れ右推奨です。
ゲームの概要
すべての箱が世界で1個だけの組み合わせ!
パッケージに印字されたフレーズの通り、本作は箱ごとにコンポーネントが異なっています。
具体的に言うと、36種のキャラクターから12種、6種の地形から2種、20種のシナリオから5種、ぼうだいなアイテムカードから約95枚、そして敵カードから約30枚が組み合わさって箱の中に入っています。
従って『ディスカバー』という同じゲームを買っても、蓋を開けてみれば封入されているキャラクターが異なっていたり、マップタイルが異なっています。
箱を開け、遊ぶたびにまったく新しい体験ができるボードゲーム。それが『ディスカバー』です。
ゲームの感想
と、さも魅力的なゲームであるように書きましたが、残念ながら今ひとつとしか言いようのない作品でした。
理由は、おおきくふたつ。
ひとつは期待を裏切る内容であること、そして面白くないことです。身も蓋もない……。
ディスカバー、即ち発見。
箱絵を見るとバックパックを背負った探検者が、過酷な土地に挑んでいるように見えます。人跡未踏の地を訪ね、そこで素晴らしい発見をするゲームであるかのように感じられます。
しかし、本作のメインストーリーは、誘拐された一般人が、バトルロワイヤル的なデスゲームに巻き込まれる、というものです。
たとえば、プレイヤーは、わずかな食糧と水だけを与えられて無人島に放り出されます。プレイヤーはそこでデスゲームの主催者が残したヒントを集め、脱出口を見つけるために奔走し、ショーを見ている観客を喜ばせることになります。
そこに、秘境を訪ねる夢やロマンはありません。カードテキストの中だけに感じ取れる観客を喜ばせるためだけに、しんどいミッションに挑まなくてはならないという、プレイヤー的には苦痛としか言えない時間を過ごすことになります。
とは言え、デスゲーム物のボードゲームは他にもあります。
たとえば『ルーム25』はデスゲームをテーマとした作品で、その悪趣味な雰囲気も含め、わたしは好きです。
『ルーム25』は認められるのに、『ディスカバー』はどうして許せないのか。
それは単に面白くないからです。
面白くない、は主観的な感情なので、すこし説明しましょう。
『ディスカバー』はデザインに一貫性がないのです。
本作は協力ゲームではありません。プレイヤーの目的は、あくまで生還であり、ゲームの勝者となることです。しかし、無人島での生活は過酷を極めます。プレイヤー同士で足を引っ張り合っていたら、すぐに食糧は枯渇し、冷たい夜を越えることができず、全滅の憂き目に会います。
協力は不可欠です。
それぞれキャラクターの固有能力を駆使し、島を探検し、情報を収集し、クエストアイテムを共有し、突破口を探します。
そして、ついに島からの脱出経路を見つけた瞬間、ゲームの主催者は、おもむろに告げるのです。
脱出できるのは、ひとりだけです。
その瞬間、プレイヤーは思い出すのです。
このゲームは協力型ゲームではなく、競争型ゲームであったことを。
こうなると、協力したことが損に思え、あのときあそこでアイテムを交換しなければ良かったと後悔したりします。
しかも具合が悪いのは、この展開はシナリオ形式で、全員生還エンドもありうるということです。
デザイナーがプレイヤーに、どういう体験をさせたいのかは分かりますが、実際に遊んでいる側としては、どういうモチベーションでゲームに向き合えばいいのか、さっぱり分かりません。
ほんとうに観客がいて、プレイヤーが翻弄される要素がエンターテイメントになれば別でしょうが、これはボードゲームなので、この場にいるのはプレイヤーだけなのです。そのプレイヤーが楽しめなかったら、いったい何のためのゲームなのでしょうか?
さらに、言うと「すべての箱が世界で1個だけの組み合わせ!」これも、結果的には、どうだったのか首を傾げざるをえません。
わたしの買った箱に入っていた5シナリオの内4シナリオを遊びましたが、クリアに要した時間は約5時間でした。
平均化すると1シナリオ1時間強と見えますが、実は20分で終わったシナリオもあれば、2時間かかったシナリオもあるのです。
計20種のシナリオを作る過程で、数を重視したことで、精度の粗いシナリオも入ってしまったのだと察します。
なかには本作を気に入って、友人と箱を交換し、多くのシナリオを網羅しようと試みるプレイヤーもいるでしょう。しかし、多くのプレイヤーは自分が買った箱だけを遊び、まだ見ぬ世界は見ないままに終わることでしょう。
「すべての箱が世界で1個だけの組み合わせ!」のファーストインパクトは絶大ですが、ただ1回だけ遊んでくれるプレイヤーのために、全力でチューニングすべきだったのでは? そう感じられて仕方ありません。
終わりに
珍しく長々と書いてしまいました。
実は、第1シナリオに対し、ルールミスによる競技終了も含めると2時間半も遊んだのです。これはシナリオも面白く、悪趣味のデスゲームの向こう側に垣間見えた世界観が素晴らしく、テンションが上がりました。
しかし、第2シナリオ以降は淡々と遊んでしまい、第1シナリオ以上に盛り上がることはなかったです。期待に応えてもらえなかった。その残念な気持ちもあって、感想に熱が入ってしまいました。
さ、気を取り直して、次のゲームを遊びましょうか!