雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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部屋から一歩も出ずに事件解決する推理ドラマ『名探偵ステイホームズ』の感想(ネタバレあり)

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 日本テレビが2週にわたって放送した推理ドラマ『名探偵ステイホームズ』を見ました。
 普段、テレビドラマは見ないのですが、ちょっと気になって見ました。
 ネタバレしていますので、事前情報なしで見たい方は回れ右推奨です。

見ようと思ったきっかけ

実家の子供部屋から出ない”子供部屋おじさん”が、
人並み外れた検索能力を駆使してネット探偵となり、
部屋から一歩も出ずに事件を解決する
サスペンスコメディー!

https://www.ntv.co.jp/stayhomes/

 インターネット上(特にSNS)の情報を元に、個人情報をあばく、いわゆる特定という言葉があります。
 本作は、ネットに浸るあまり、特定のスペシャリストになってしまった主人公が、ひょんなところから警察の捜査協力を受けるところから物語がはじまります。


 これだけだと現代的なテーマを扱ったドラマでしかありえませんが、わたしが興味を持ったのは主人公が部屋から一歩も出ない引きこもりであること、そして警察関係者とは、主にZoomを介してコミュニケーションを交わすことです。
 これは、まさしく、ここ1~2年、リアル謎解きゲームのプレイヤーとして、わたしがやってきたことに他なりません

作品紹介

 直近だとSNS×ミステリーと銘打たれたARG『Project:;COLD case.633 惨劇の五芒星事件』が記憶に新しいです。
 2022年3月18日に幕を開け、月末に終わりを迎えた本作において、プレイヤーである我々は融解班としてインターネット越しに多くの謎を解き、キャラクターのIDとパスワードを破り、特定していきました。

 SCRAPが2020年7月に公演開始したリアル脱出ゲームデリバリー『青梅雨に届いた手紙』は、設定からして似通っています。
 プレイヤーは在宅で事件を調査する『アットホームズ探偵事務所』の一員となり、Zoom越しに他プレイヤーと連携しながら謎を解いていきます。

 同じSCRAPでは視聴者参加型のオンライン演劇の『オンライン・パパラッチ』にも共通点が多いです。
 プレイヤーはリアルタイムで映像を視聴し、犯罪が行われた決定的瞬間のスクショを撮り、SNSで告発するオンライン・パパラッチとなり物語に参加します。

 テレビで人気を博したコンテンツが、コラボやスピンアウトという形でリアル謎解きゲームになることは多いです。
 また『人狼』や『マーダーミステリー』を遊んだものを放送するという形式も少なくありません。
 しかし、リアル謎解きゲームが切り開いた、新たな形態が、そのままテレビドラマの枠組みに落とし込まれるという点を興味深く感じました。
 言ってみれば北村匠海演じる相田アタルは、他ならぬ我々自身です
 果たして我々はどのように調理されるのか?
──という興味をもって視聴しました。

ドラマの感想

 物語の展開は、非常に面白かったです。
 失踪したアイドルの行方を追っているうちに、殺人事件であることが分かり、それがさらにおおきな事件の一角に過ぎなかった……! と、話のスケールが、どんどんおおきくなっていくのはワクワクしました。
 リアル謎解きゲームにおいても「皆さんで仲良く謎を解きましょうねー」から始まって、中盤で死体が発見され、にわかにスリリングな展開を追っていく作品は多いです。
 特に盛り上がるのは、首にタトゥーのある男が、主人公の家に潜入してきた場面でしょう。
 ネット越しとなると、ある意味、主人公は絶対的な安全圏から捜査をしていたことになります。しかし、犯人の一味が、家に乗り込んできた瞬間、安全だった場所が安全でなくなり、ゲーム感覚だったものがゲームでなくなります
 この当事者感は、ゲーム的には主人公体験とも言い換えられます。
 あの瞬間、相田アタルは警察の協力者という物語の脇役から、犯人に敵視される名探偵という主人公になったのです


 物語展開、謎、ディテールは全体的に好みでしたが、登場人物の造型は、好みから外れました。
 シャーロック・ホームズも社会不適合者でしたが、相田アタルもまた、実家に引きこもる子供部屋おじさんとして描かれ、その言動にはオタクめいたところがあります。
 比較的、好意的に描かれている──と客観的に感じはしましたが、やはり、オタク的な言動がネタとして取り扱われるのには、やや抵抗感がありました。

終わりに

 本作は日英共同企画CONNECTEDシリーズとして、今後も展開していく様子です。
 上述しましたが、やっていることは、まさしくリアル謎解きゲームで、ARGとも非常に相性が良いです。そういった発展にも期待を持ちたいですね。