雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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警察による捜査ファイルを読んで推理する『マイアミ沖殺人事件』の感想


 ジョー・リンクス原案、デニス・ホートリー著『マイアミ沖殺人事件』を読みました。
 ネタバレには配慮していますが、気になる方は回れ右推奨です。

本の概要

 原作は1936年に刊行、中央公論社から土屋政雄による和訳が刊行されたのは1982年です。
「捜査ファイル・ミステリー」として販売され、警察による捜査ファイルを模したテキストを読み込んで、犯人を推理するというゲーム的な小説です

本の感想

 ゲーム的な推理小説を振り返った時、避けては通れない名作として絶対に名前の挙がる『マイアミ沖殺人事件』。今まで、なんとなく読まないでいましたが、ついに決心して読みました!
 結論としては、驚きを禁じえません。
 小説は歴史が古いので、多くの名作傑作が残っていますが、まさか1936年に、ここまで遊び心に富んだ、ゲーム的な作品が刊行されていたとは……です



 本書は事件現場に残された毛髪やマッチの燃えさしが付録されていることで有名です
 小説と立体的な証拠を見比べることで、推理が進むのであろう。正直、その程度と思い誤っていました。
 実際は、ぜんぜん違いました。



 容疑者全員の写真はもちろん、現場を撮影した写真、手書きのメモや手紙、容疑者たちの指紋、台本形式の供述書、等々……すべてがリアルな捜査資料なのです
 読者は現場の刑事が調査して集めた資料を読み込み、そこから「当時、現場では何があったのか?」を頭のなかで再構築して、犯人を推理する必要があります
 確かに毛髪やマッチは目立つので言及しやすいですが、本書の本質は、そこにはありませんでした。今で言うリアル体験型のミステリーゲームを、そのまま自宅で遊べる形式にしたような、そんなリアルさに満ちあふれているのです
 百聞は一見にしかず、読んでみて大正解でした。

終わりに

 本シリーズは全4作となっており、4作とも日本語版が刊行されています。『誰がロバート・プレンティスを殺したか』『マリンゼー島連続殺人事件』『手掛りはここにあり』。
 機会を見て、第2弾以降も読んでいきたいですね。