ロードムービー風のアドベンチャーゲーム『Road96』を遊びました。
独裁国家ペトリアからの脱出を目指す1人用のゲームです。
ゲームの感想
すこし時代を感じさせるチープな3Dグラフィックに、90年代のBGM、そしてタランティーノ、コーエン兄弟、ポン・ジュノに影響を受けているという情報に興味を覚えて遊びました。
2周、遊び終えるのに要した時間は15時間。
この手のゲームが大好き! という方も多いと思うので、紹介させてください。
プレイヤーは独裁国家ペトリアから国境を超えて、他国へと亡命をしようとしている少年もしくは少女になります。
亡命したいと思う理由は語られませんが、ラジオから流れるニュースに、あちらこちらに貼られた選挙戦のポスターから、脱走したくなる気持ちが、なんとなく察せられます。
亡命の過程でヒッチハイクしたり、バスで乗り合わせたり、ホテルでばったり会ったり、プレイヤーは様々な出会いを果たします。それはプレイヤーと同じように亡命を試みようとしている若者であったり、その手を掲げようとしている革命家であったり、あるいは秩序の担い手であったりです。
出会いと別れを繰り返しながらプレイヤーは国境を目指し、志半ばで死んだり、警察に保護されることもあれば、亡命に成功することもあります。
ひとりのキャラクターの物語を終わりまで見届けたら、プレイヤーは、また異なる少年少女が亡命しようとするのを、また最初から追いかけることになります。
そう、この国には、無数の亡命したい若者がいて、プレイヤーは彼らに憑依することで、今、この国でなにが起こり、なにが進行しているのかを俯瞰することになるのです。
プレイしていて思い出したのは、隠れトランプ支持者のことです。
2年前、トランプ元大統領とバイデン氏が争っていたとき、アメリカにはトランプ元大統領を支持しているけれど、そのことを公の場で明かすと、激しく批難され、ときには職を失うことになるから黙っているのだというニュースを見ました。
日本でオリンピック開催の是非が問われたときに肌で感じたのですが、自分の思いや考えを正直に言うことができない、息苦しさがあります。
本作で扱われているのは、まさしくこういった政治的な問いかけに対して声なき声の持ち主、サイレントマジョリティがどういう選択をするのか、だと感じました。
テーマに興味を覚えた方は、ぜひ遊んでみてください。
終わりに
キャラクターの中では、ゾーイが圧倒的に気に入りました。
深夜2時、周囲の迷惑も考えずラッパを吹き鳴らすシーンは、全編を通して見ても最高ではないでしょうか。ゾーイとのエピソードは、どれも素敵でした。彼女が幸せになれる時代が訪れることを願うばかりです。