雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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DIE VERWANDLUNG

 ある朝、霧崎夜辺がなにか気がかりな夢から目を覚ますと、自分が寝床の中でひとりの殺人鬼に変わっているのを発見した。外見にはなんの変化もないし、夜辺の部屋は就寝前となにも変化がないように見える。その部屋の中で、夜辺の中身だけがどこか決定的に変化してしまっていた。
 寝床をでた夜辺は台所に向かい、そこで水を飲み、そして包丁を手に取った。どうしてそんな行動を取ったのか夜辺には判らなかった。ただ、なんとなくそうしてしまったのだ。
 寝間着のまま外に出た夜辺は、裸足のまま道を歩き、向こうから歩いてきた男の腹部に、持っていた包丁を突きたてた。刺された男ははじめ、なにが起こっているのか理解していないかのように、とぼけた顔をしていたが、夜辺が包丁を何度も抜き刺しすると、顔を苦しみに歪め、それから倒れおちた。もう死んでしまったその男は、死ぬ前に自分が目の前に立っている殺人鬼に殺されたということを自覚しただろうが、夜辺の方は、その男が倒れ、その男を中心に血の海が広がっていくのを見ても、自分が男を殺したのだということに気がつかなかった。
 けれど、なんとなく胸のうちにあった霧が晴れたような気がして、夜辺は微笑んだ。
 そして次の獲物を求め、ゆっくりと歩きはじめた。


『変心』529文字